FXで損切り出来ない、を卒業!目安、10pips設定について解説

FX取引で「損切り出来ない」という悩みを抱えるトレーダーは、数多いです。
実際、FXで損失を出した理由の第1位は「損切りができなかったから」で、56.5%に上ります。

損切り出来ないのは、あなたのトレードが下手だからではありません。ましてや心が弱いからでもありません。
行動経済学では「損失回避バイアス」により、損失確定を先延ばしにしてしまう背景が実証されています。

よって、損切りは自身で目安を決め、ツールに設定することで、感情を排した機械的な実行が重要となるのです。

本記事では、損切りできない原因を解明し、10pipsなどの具体的な目安の設定、そして機械的に実行できる方法まで徹底解説します。

「損切りできない」で損をした人は56.5%!FXの損切りと、ロスカットの違い

FXにおける損切りとは、損失の拡大を防ぐために自身のリスク許容度(どれくらい損失に耐えられるかの度合い)の上限に達した時点で決済し損失を確定させる行為です。

損失を最小限にすることが損切りの目的であり、FXを始めとした投資では必須のスキルと言えるでしょう。

損切りとロスカットの違い

損切りとロスカットはいずれも損失を確定する行為ですが、誰が実行するかという点が大きく異なります。

損切りは投資家が自らの判断でポジションを決済する行為で、ロスカットは、証拠金維持率が一定水準を下回った際にFX業者が自動的にポジションを強制決済する仕組みです。

FXで失敗した理由の1位は「損切りできなかった」56.5%の人が回答

一般社団法人金融先物取引業協会が行った調査によると、FXの取引で損失を出してしまった原因の第1位は、「損切りができなかったから」が 56.5%で最も高くなっています。

出典:一般社団法人金融先物取引業協会「外国為替証拠金取引の取引顧客における金融リテラシーに関する実態調査」のデータを元に筆者作成

なぜ損切りをできないトレーダーが多いのでしょうか?

FXトレーダーが損切り出来ない2つの原因

損失が拡大してしまうにもかかわらず、トレーダーが損切り出来ない理由は以下の2つが挙げられます。

1.損失回避バイアス

行動経済学では、人間には「利益を得る喜び」よりも「損失を被る痛み」を大きく感じる「損失回避バイアス」が実証されています。

含み損が発生しても「いつか戻るはずだ」という根拠のない期待(希望的観測)を抱き、損失を確定させる痛みを先送りにしてしまうのです。

例えば、「1 万円もらえる」嬉しさと、「1 万円失う」悲しさでは、1万円を得る喜びよりも、1万円を失う悲しみの方が2倍ほど大きく感じるため、人々は損失を嫌う傾向があるのです。

出典:新宿区新宿自治創造研究所「行動経済学「ナッジ」に関する研究

よって、損切りができない間に含み損が拡大し、最終的に強制ロスカットや巨額の損失につながるケースが多く見られます。

2.ポジポジ病

常にポジションを持っていないと不安になる心理状態(ポジポジ病)に陥ると、根拠が薄い理由でエントリーしてしまい、無駄な取引が増え損失が積み重なる原因となります。

損切りができる人とできない人の違い

損切りができる人とできない人は、心理状態に以下のような違いがあります。

損切りができる人損切りができない人
心理状態事実を受け入れる
「予想が外れた」と認め、再起を図る。
現実逃避
先延ばし「いつか戻るはず」「今さら切れない」と祈る。

続いて損切りできる人とできない人が、1ドル155円で「買い」(ロング)でエントリーした場合の取引を見ていきましょう。

損切りができる人損切りができない人
例:1ドル155円で「買い」(ロング)

1ドル150円時点
即時決済
「傷が浅いうちに逃げる」という判断を下す。
様子見
「まだ大丈夫だろう」と損失を確定させる行為を避ける。
↓↓
1ドル145円時点
既にノーポジション。
次のチャンスを探しているか、資金を守っている。
思考停止。
含み損が拡大し、身動きが取れなくなる。
最終結果致命傷を回避。
資産を守り、トータルで利益を目指せる。
ロスカット(強制決済)の危険。
資金の大半を失い、市場から退場するリスクがある。

損切りが出来ないと、含み損が拡大してしまいロスカットや多額の損失、さらにはFXから「退場」のリスクが生じてしまいます。

自分で損切りの目安を決め、設定することで機械的に実行できる

FXで重要なポイントは、「どんな優秀なトレーダーでも負ける(損失を出す)ことがある」という点です。
損切りできる人は自身で損切りの目安を決め、一定額を超えると機械的に損切りできるように設定しています。

損切りを先延ばしにした結果、待っているのはFX会社によるロスカット(強制決済)です。
含み損が膨らみ、証拠金維持率が一定水準を下回ると強制的に決済される「ロスカット」は、トレーダーとして避けたい事態です。

FX取引で成功するためには、損切りの目安やルールを自分であらかじめ決め、設定しておくことが重要です。

ツールに損切りを設定しておくことで、感情を排した機械的なトレードが可能になります。

FXの損切り、目安は何パーセント?どうやって決める?

損切りの目安を決める方法には、主に金額や損失率、pipsで決める方法とテクニカル分析を活用した手法があります。

FX初心者には、pipsとテクニカル分析を組み合わせる方法をおすすめします。
金額で決める場合「運用資金の○パーセント」を目安にするトレーダーもいますが、割合は運用資金額やリスク許容度に応じて自分で決めます。

金額・損失率・pipsで損切りの目安を決める

具体的な損失金額をベースに、あらかじめ損切りの金額を決めておく手法です。

例えば、FXの運用資金が50万円で、10%を損失許容額と定めた場合は5万円の損失で損切りを実行するように設定します。金額ベースで損切りをするメリットは、基準が明確で判断で迷うことが無い点です。

また、損失率で損切りの目安を決めるトレーダーも存在します。
「証拠金に対して○%の損失が発生したら損切り」といったルールを設定するもので、資金量に応じた柔軟な管理が可能になります。

さらに、値幅をpips単位で設定する方法もあります。
「エントリーポイントから20pips逆行したら損切り」というように、為替レートの変動幅を基準にします。

ただし、pipsを目安にすると、取引ロット数によって実際の損失額が変わりますので、トレード前に損失額を計算しておくことが重要です。

テクニカル分析による損切り判断

移動平均線など指標を基準とした、テクニカル分析を損切りの目安にする方法です。

移動平均線は一定期間の平均価格を線でつないだもので、例えば買いポジションを保有している状態で価格が移動平均線を下回った場合、上昇トレンドが終わった可能性を示すシグナルとなります。
損切りの目安の1つになるでしょう。

精度を高めるためには、期間の異なる複数の移動平均線を組み合わせる、ボリンジャーバンドやMACDなど他の指標もチェックするといった方法があります。

FX初心者は、pipsとテクニカル分析の組み合わせで損切り目安を決めよう

pipsはFX取引で用いられる値動きの単位で、異なる通貨ペア間でも統一的に変動幅を比較できますので、損切りの目安として初心者におすすめです。

円を含む通貨ペア(米ドル/円など)では「1pips=0.01円」、円を含まない通貨ペア(ユーロ/米ドルなど)では「1pips=0.0001通貨単位」となります。

たとえば米ドル/円を1万通貨で保有している場合、1pipsの変動で100円、10pipsで1,000円の損益が発生します。

損切りの目安としてpipsを活用する際は、「エントリーから20pips逆行したら決済」といった具体的な基準を設けます。
ただし、取引数量によって実際の損失額は変わるため、事前に金額を確認しておくことが重要です。

さらに、チャート上の支持線(サポートライン)や抵抗線(レジスタンスライン)といったテクニカルな根拠と照らし合わせて調整すると、より合理的な損切りラインを設定できます。

損切りの目安を10pipsにするのが良いって本当?

「FX 損切り」で検索すると「FX 損切り10pips」という検索ワードが出てきます。

「損切りは10pips」という基準は、必ずしもすべての取引に適しているわけではありません。
適切な損切り幅は、トレードスタイルや通貨ペアの特性によって変わります。

スキャルピングのような短期売買では数pipsから10pips程度が一般的ですが、デイトレードでは50pips未満、スイングトレードではさらに広い設定が求められることもあります。
また、値動きの激しい通貨ペアと安定した通貨ペアでは、適切な損切り幅が異なります。

より実践的なアプローチは、「1回の取引で許容できる損失額」を資金の○%以内などで設定し、資金額から取引数量を逆算してpips幅を決定する方法です。

FXで損切りする際の注意点

FXで運用資金を守るには、適切な損切りが欠かせません。しかし、やり方を間違えると逆効果になることもあります。
ここでは、損切りを実行する際に注意すべきポイントを解説します。

「損切り貧乏」に陥らないために

損切りは損失の拡大を防ぐ重要な手段ですが、過度に頻繁な損切りは「損切り貧乏」を招く恐れがあります。
わずかな値動きで損切りを繰り返すと、小さな損失が積み重なり、結果的に資産が目減りしてしまうのです。

感情に流されず、「どのラインを超えたら切るか」という明確なルールを事前に設定し、機械的に実行することを心がけましょう。

そして損切りは失敗ではなく、次の利益につなげるための必要なコストと捉えましょう。

ナンピンのリスクを理解する

ナンピンは、含み損が出ているポジションに対して同じ方向で追加エントリーし、平均取得価格が低下していきます。

合理的に見えますが、相場がさらに下落し続けた場合に損失はさらに膨らみます。
ナンピンは相場の底を見極める高度なスキルが必要ですので、計画性のない実行は避けましょう。

両建ては基本的に避ける

両建てとは、同一通貨ペアで買いと売りの両方のポジションを持つことです。
損失を一定額で固定できる手法ですが、スプレッドによるコスト増やスワップポイントの支払いにより、利益の計算や資金管理が複雑になります。
知識や経験が乏しい初心者が行うと、ロスカットのリスクを高めてしまいます。

自分のルールを徹底的に守る

自分の損切りルールを作った後は、徹底的にルールを守ることを心がけましょう。
設定したラインに達したら、機械的に実行するために注文方法を設定しておきます。
そして、損切り貧乏にならないようルールを精査し続けることで、長期的な成功に近づけるでしょう。

まとめ

FXで「損切りできない」状態を脱するためには、あらかじめ損切りの目安を決めて設定し、機械的に実行しましょう。

損切りの目安は、金額・損失率・pips・テクニカル分析など複数の方法がありますが、初心者にはpipsとテクニカル分析の組み合わせがおすすめです。
10pipsという基準もありますが、これはスキャルピング向けであり、自分のトレードスタイルに合わせた調整が必要です。

重要なのは、損切りを「失敗」ではなく「次の利益につなげるコスト」と捉えることです。
適切なルールを作り、徹底的に守るという姿勢がFXで長期的に生き残るためのポイントとなるでしょう。

今日から、あなたも感情に支配されない損切りルールを設定してみませんか。