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この記事では、アメリカの株式市場で使われているテクニカル分析、『ヒンデンブルグオーメン』について解説していきます。
『ヒンデンブルグオーメン』はアメリカの株式市場の暴落を予知する指標として、一部コアな投資家たちから絶大な支持を得ているインジケーターです。
そんな『ヒンデンブルグオーメン』の由来や、予知の仕組み、サインが出た時の対処方など、この記事を読めば全て解決できるような内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ヒンデンブルグオーメンとは
ヒンデンブルグオーメン(またの名をヒンデンブルグ予兆)は、アメリカの物理数学者ジム・ミーカ(Jim Miekka)が考案した、アメリカの株価変動を元に、株価暴落を予測するテクニカル分析の指標です。
その仕組みは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が取り扱う銘柄の高値・安値の数から算出されるという、非常にシンプルな指標でありながらも、その効果は抜群。
ヒンデンブルグオーメンが点灯するだけで市場全体に緊張が走り、その影響はニューヨーク株価だけでなく、為替市場を始めとした他の市場にも波及していきます。
テクニカル分析とは?初心者が知っておくべきポイントや分析方法を解説!FXにおけるヒンデンブルクオーメンの影響
FXにおけるヒンデンブルクオーメンの影響は、直接的なものではありません。
まず、ヒンデンブルグオーメンでは下記の3つの現象が起きやすいと言われています。
- 株価が5%以上下落する可能性→77%
- パニック売りとなる可能性→41%
- 株式市場が重大なクラッシュを引き起こす可能性→24%
上記から分かることとしては、ヒンデンブルクオーメンが点灯した際は、米国の株式相場が売り相場に転じるという点です。
米国経済が弱まれば米ドルも売られることになるため、為替相場全体に与える影響は大きいといえるでしょう。
ヒンデンブルグオーメンの由来
「ヒンデンブルグオーメン」の由来は、1937年に米国で起きた飛行船「ヒンデンブルク」号の爆発事故です。
当時、高価な運賃にもかかわらず、ヒンデンブルク号は大西洋横断をたった2日半で成し遂げる高速便として高い人気を誇っていました。
しかし、1937年現地時間5月6日19時25分ごろ、ベルリンのフランクフルトからアメリカのニュージャージー州マンチェスター・タウンシップへの長旅を終えて着陸する寸前、突如、尾翼付近が爆発。
炎は瞬く間に船体を焼き尽くし、ヒンデンブルク号は爆発からわずか32秒ほどで墜落、乗員・乗客97人中35人と地上の作業員1名が死亡しました。
そんな凄惨な事件と不吉な前兆「オーメン」という言葉を組み合わせて、ヒンデンブルグ・オーメン(株価暴落の予兆)という造語が生み出されました。
ヒンデンブルグオーメンのメカニズム(点灯条件)とは
続いて、ヒンデンブルグオーメンの点灯条件を見ていきましょう。
点灯条件は以下の4つが全て揃ったタイミングとなります。
条件1:NYSEでの52週高値更新銘柄と安値更新銘柄の数が共にその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上
条件2:NYSE総合指数の値が50営業日前を上回っている
条件3:短期的な騰勢を示すマクラレンオシレーターの値がマイナス
条件4:高値更新銘柄数が安値更新銘柄数の2倍を超えない
それでは、1つ1つ見ていきましょう。
条件1:NYSEでの52週高値更新銘柄と安値更新銘柄の数が共にその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上
まず1つ目は、銘柄1つ1つの値動きに着目した指標です。
通常の穏やかな市場では、銘柄数と株価は逆相関が成り立ちます。
最高値の銘柄が多い時:最安値銘柄は少なく、株価は上昇
最安値の銘柄が多い時:最高値銘柄は少なく、株価は下落
高値を更新している銘柄が多ければ、相場全体が強気となり株価も上昇傾向があり、逆に安値を更新した銘柄が多いと相場全体が弱気になっている合図となります。
しかし、ヒンデンブルグオーメンが点灯するような相場では、最高値を更新する銘柄と最安値を更新する銘柄が混在する「異常な状態」になります。
条件2:NYSE総合指数の値が50営業日前を上回っている
2つ目は、市場全体の値動きに着目した指標です。
ここで登場する「NYSE総合指数」(NYSE Composite Index)とは、ニューヨーク証券取引所の上場の全普通株を対象とする「調整時価総額加重平均指数」を指します。
調整時価総額加重平均指数という言葉を聞き慣れない方も多いかと思いますが、単純平均に時価総額の大小を反映することで、平均よりも精度の高い値動きを捉えることができます。
このNYSE総合指数が50営業日前を上回っていることで、株式全体が上昇を続け高値圏に推移していることがわかります。
条件3:短期的な騰勢を示すマクラレンオシレーターの値がマイナス
そして3つ目は、テクニカル分析に着目した指標です。
マクラレンオシレーター(McClellan Oscillator)とは、「値上がり銘柄数」と「値下がり銘柄数」の差を短期・中期の移動平均で見た時の、短期・中期の移動平均の差から相場のトレンドを図るオシレーター系のインジケーターです。
MACDのように数値がプラスになれば上昇傾向、マイナスになれば下落傾向とひと目で判断できる、非常にわかりやすい指標といえるでしょう。
MACDとは?FXでのチャートの見方やMT4への設定方法について条件4:高値更新銘柄数が安値更新銘柄数の2倍を超えない
最後の4つ目は、トレンドの勢いに着目した指標です。
高値更新の銘柄数が安値更新の銘柄数よりも多いということは、それだけ相場全体の上昇傾向が強いと判断できます。
しかし、この条件のように2倍を超えないということは、上昇傾向ではあるものの勢いはそれほど強くない状態だと判断できます。
ヒンデンブルグオーメンの過去の点灯実績
ヒンデンブルクオーメンは、どういったタイミングでシグナルを発するのでしょうか?
ここでは、実例を用いて解説していきます。
2007年~2008年:金融危機
ヒンデンブルグオーメンが複数回点灯し、その後市場が大幅に下落しました。
この期間中、S&P 500指数は50%以上の下落を記録しています。
一般的には、ヒンデンブルクオーメンが点灯した後、その影響が継続するのは40日間程度と言われています。
しかし規模によってはパニック売りがさらなるパニック売りを呼び、長期化することも考えられます。
上チャートの2008年9月以降では「リーマンショック」による激しい下落が見られますが、その前からすでに下落トレンドが始まっており、それはヒンデンブルクオーメンによって示唆されていたというわけです。
2010年:フラッシュクラッシュ
ヒンデンブルグオーメンが点灯した後、市場は短期間で約10%の急落を経験しました。
同時期のドル円の推移も確認してみましょう。
以下チャートでは、ドル売りが加速している状況が読み取れます。
これらの流れから分かるように、ヒンデンブルクオーメンが点灯した際はドルが売られる傾向にあるため、ドル円のショートエントリーの狙い目となります。
2015.6:チャイナショック前
2015年6月にヒンデンブルグオーメンが点灯した際には、そのすぐ後に、中国において「チャイナショック」が起こりました。
この株価の急落により、NYダウは1万8000ドル台から1万5000ドル台まで下落し、同年6月から8月ということでいくと、約2カ月で約15%の下落という非常に大きなクラッシュを引き起こすことに。
その後は、中国の金融緩和政策やアメリカの低金利政策の維持によって落ち着きを取り戻し、その際にヒンデンブルクオーメンが点灯していたことが知られ、一躍注目を浴びる事になりました。
2020.3:コロナショック前
皆さんの記憶に新しい重大なクラッシュといえば、2020年のコロナショックではないでしょうか。
当時は、新型コロナウイルス感染対策の一環として、人や物の移動やコミュニケーションなど、様々な事象が制限され、未曾有の経済危機に陥る事態。
その影響は株価にも表れ、移動制限や感染拡大に歯止めがかからないことにともなって、投資家の売りの動きが加熱し、リーマンショックの再来と言われるほどの下落を引き起こしました。
その後、感染症予防対策の徹底や、各金融緩和策により、3月下旬頃には反発しましたが、その動きに肝を冷やした投資家の方も多かったのではないでしょうか。
ヒンデンブルグオーメンが点灯を確認するには
ヒンデンブルクオーメンを確認するには、TradingViewが最もおすすめです。
インジケーターの検索画面から、「hin」と打ち込むと、以下のようにインジケーターを選択できます。
実際にチャートに反映させてみると、以下のように表示されます。
ヒンデンブルクオーメンの条件が揃った際には、チャート上に「Hindenburg Omen」の文字が出力されます。
上のチャートは「S&P500」の週足チャートですが、ヒンデンブルクオーメンの条件が揃った際には、ほとんどの確率で下落トレンドを捉えていることが分かります。
なお、以前までは、ヒンデンブルクオーメンを確認するには「eワラント証券」のホームページから、というのが主流でした。
eワラント証券投では、独自アルゴリズムによる投資情報を無料提供していて、このようにヒンデンブルグオーメンの点灯の有無、相場の危険度などを一括でチェックすることができました。
しかし残念ながら、eワラント証券は存続しておらずヒンデンブルクオーメンも確認できない状態となっています。
ヒンデンブルグオーメンが点灯した場合の注意点
最後に、ヒンデンブルグオーメンが点灯した時の注意点を解説していきます。
主な注意点は以下の4つです。
注意点1:安全通貨買い・ドル売り
注意点2:株価が長期間上昇を継続している時には暴落警戒
注意点3:頻繁に出るサインではないため知名度が低い
注意点4:一度サインが点灯すれば40日間ほど影響を持つ
注意点5:的中率は100%ではない
注意点6:株価が下落しても必ずしもドル安になるわけではない
注意点7:為替相場はゼロサムゲーム
以下より、それぞれの詳細について解説していきます。
注意点1:安全通貨買い・ドル売り
ヒンデンブルグオーメンが点灯することによって、急落・暴落のリスクが高まっていることを注意しましょう。
アメリカの株式市場が急落するということは、投資家たちがお金を一気に引き上げて安全な資産に移す=リスクオフ思考が先行する可能性が非常に高いです。
それに伴い、アメリカの株式市場に限らず先物や為替市場にも何かしらの影響が必ず起きます。
特に為替市場の場合は、円やスイスフランといった安全通貨の買いが加速して、ドル安が進む可能性が高いので、頭に入れておくと良いでしょう。
注意点2:株価が長期間上昇を継続している時には暴落警戒
株価が長期間上昇トレンドを形成している際は、暴落に注意してください。
投資の世界では「山高ければ谷深し」という格言があり、値動きの変動を山と谷に例え、山(上昇)が高くなれば、谷(下落)は予想以上に深くなるという意味が込められています。
この言葉通り、長く上昇が続いている相場であれば、それだけ一気に暴落する可能性が高いと言えます。
特に急な上昇が続いている時ほど一瞬で暴落していくので、ヒンデンブルグオーメンが点灯した際は、過去の株価の値動きにも注目していきましょう。
注意点3:頻繁に出るサインではないため知名度が低い
ヒンデンブルグオーメンの知名度は、非常に低いといえるでしょう。
その存在すら知らない投資家も多く、また知っていても暴落の可能性を信じない投資家も少なくありません。
確かに「オーメン」というホラー映画から由来が来ている時点で、オカルトな感じが否めないのは事実です。
しかし、過去に暴落を何度も的中させている以上、無視するべきではありません。
投資という不確定要素が多い世界で戦っていくなら、こういったリスクが高い場面はできるだけ避けることが得策と言えます。
そのため、定期的にヒンデンブルグオーメンのサイン点灯を確認して、他の投資家が意識していなくてもサインが点灯したら万が一に備えた行動を取りましょう。
注意点4:一度サインが点灯すれば40日間ほど影響を持つ
ヒンデンブルグオーメンのサインが点灯したら、その先40日間ほどは影響を持つことを意識しましょう。
サインが点灯してすぐに暴落が起きる事もあれば、少し時間をおいてから暴落が起きる可能性もあります。
そのため、「サインの点灯後に暴落がないし、上昇が続いているから買い増ししよう」という行為はかなり危険です。
相場から長く利益を得続けるためにも、損をしていないうちに、損が拡大する前に決済することをおすすめします。
注意点5:的中率は100%ではない
先ほどもお伝えしたように、ヒンデンブルグオーメンが点灯した後は、約80%の確率で5%以上株価が下落すると言われています。
もちろん、これが驚異的な数値であるのに間違いはないですが、逆を言えば20%の確率で的中しません。
そのため、この点灯を信じきって、点灯後に売りでエントリーし過ぎてしまうと、急落せずに大きな損失を抱えてしまった、という事も起こり得ます。
点灯後は、かなり売りを意識する事になるとは思いますが、最終的な決断は他の根拠も含めて行うようにしましょう。
注意点6:株価が下落しても必ずしもドル安になるわけではない
ヒンデンブルグオーメンは、米国株式のデータをもとに分析している訳ですから、それが点灯するという事は、株価の下落、すなわちアメリカの経済状況の悪化を意味します。
経済状況が悪化すれば、米国株が下落し、米ドルの価値が下がるわけですから、点灯後はドル安になるだろうと考える人も多くいらっしゃるでしょう。
しかし、その考え方は非常に危険です。
もちろん、両者に深い関係性があるのは事実ですが、必ずしも相関関係を示すわけではありません。
ですので、点灯後も、必ずドル安になるだろうと思い込んで、トレードすることのないように注意しましょう。
超重要!FXにおいてアメリカの政策金利を意識すべき理由とは?注意点7:為替相場はゼロサムゲーム
ヒンデンブルグオーメンによるサインは米国株式市場の低迷を示唆しますが、世界各国の株式市場はもちろん、為替市場や先物市場といった他の市場にも必ず影響があります。
また為替相場はゼロサムゲームであるため、暴落が起きているということは、その裏で暴騰が必ず起きています。
暴落時に世のお金はどこにお金が流れているか、世界的にリスクオフの状況でどこに資産を預けたら安全なのか、これらを考えることで自ずと対処方法も見えてくるでしょう。
ヒンデンブルグオーメンのサイン点灯を「危険なもの」「ネガティブなもの」とだけ捉えることなく、「これを利用してどうやって稼ぐか」「どこにお金が流れていくのか」という観点で投資に向き合うと、稼ぐための新たなヒントを見つけられるかもしれません。
ヒンデンブルクオーメンに関するよくある質問
ヒンデンブルグオーメンは当たらないと聞きました。実際どうなんでしょうか。
ヒンデンブルグオーメンが点灯しても当たらないことはありえます。ただし暴落している前にはほぼ必ず点灯しているので、参考にはしておくとよいでしょう。
2022年、ヒンデンブルグオーメンは点灯したんですか。
点灯しています。また、2022年は毎月1~2回程度転倒しており、直近の点灯日程はこちらからご覧いただくこともできます。ぜひご参照ください。
コロナショックの時にヒンデンブルグオーメンは点灯しましたか。
点灯しました。コロナショックは2020年2月20日と言われていますが、ヒンデンブルグオーメンは同年1月28日に点灯しています。点灯後おおよそ1か月は下落警戒期間と言われますので、ほぼ正確に暴落を言い当てたと言えるでしょう。