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FXでは、リスクヘッジや利益追求のためにしばしば「両建て」と呼ばれる戦略が用いられます。
買いポジション・売りポジションをどちらも保有することで、チャートの方向性にかかわらず利益が取れるようになるため、FX初心者にとっては「最強の戦略」に思えるかもしれません。
ただ、両建ては確かに有効な戦略ですが、基本的には推奨されていない運用手法です。
本記事では、両建てが最強と言われる理由やその真偽について探り、またFX初心者が知っておくべき両建てのポイントを解説していきます。
目次
FXにおける両建て手法とは
FXにおける両建てとは、買い・売りポジションを同時に保有することです。
例えば1ドル=130円の時、1ロットずつ両建てすることを考えてみましょう。この時1ドル=131円となれば、口座内の含み損益は以下の通りとなります。
1ドル=130円 → 131円の時
買いポジション:+10,000円
売りポジション:-10,000円
上の状況においては、同じタイミングで両建てすることで含み損益は相殺されることになるため、利益も損失もゼロといえます。
ただ実質的にはスプレッド等のコストが生じるため、扱うロット数によっては負担に感じる部分もあるでしょう。
しかし、それ以上に含み損益を固定できるメリットは大きく、上手く活用することで強制ロスカットのピンチから脱せられるかもしれません。
FXにおいて両建てが最強な理由
結論からお伝えすると、両建ては最強と呼べる戦略ではありません。
しかし、部分的には最強といっても差し支えないほどのメリットがありますので、本節ではその点についてお伝えしていきます。
含み損益を固定できる
資金余力が少なく、あと少しで強制ロスカットされそう…、そんな時は両建てによる一時しのぎが有効です。
ドル円10ロットの買いポジションを保有していたとすれば、同じくドル円10ロットの売りポジションを保有してみましょう。
そうすることで、チャートが上がっても下がっても口座内の資金額は変動しなくなるため、強制ロスカットだけは免れることができるでしょう。
後は余裕があるときに資金を追加していけば、口座の再興の目途も立てられるのではないでしょうか。
両建てMAX方式を活用できる
ポジションを保有する際は必ず証拠金が必要となりますが、両建てする際は追加の証拠金は不要です。
買いポジションと売りポジションのどちらか大きい方の金額のみ証拠金として扱われ、これを「両建てMAX方式」と呼びます。
両建てMAX方式を上手く活用できるようになれば、稼げるチャンスも平常時の2倍近くに広がるでしょう。
両建てによるアービトラージ
FXの必勝法としてかつて注目されていたのが、両建てによるアービトラージです。
アービトラージとは、両建てすることで為替変動によるリスクを抑え、スワップ金利だけでメリットなしで抜き取ろうというもの。
やり方も非常にシンプルで、スワップポイントがプラスになるよう口座を選定し、同タイミングで両建てするというものです。
1つ例を示しましょう。通貨ペアを選ぶ際、合算スワップポイントがプラスになる口座の組み合わせを見つけます。
A口座:買いスワップ「+5」 & 売りスワップ「-5」
B口座:買いスワップ「+4」 & 売りスワップ「-4」
A口座で買いポジション、B口座で売りポジション、これらを両建てすることで、為替変動のリスクを減らして「+1」のスワップポイントを受け取ることができます。
実際、FX会社ごとに付与されるスワップポイントは大きく異なるため、アービトラージ専門のトレーダーも存在しているほどです。
おそらくFXでもっとも手堅く、かつ安定的に稼げる手法になりますので、裁量トレードで上手く稼げないという人は、是非アービトラージに挑戦されてみてはいかがでしょうか。
両建てに活かせる最強通貨ペア
両建てする上でおすすめの通貨ペアは、狭いレンジ相場を形成する通貨ペアです。
ここでは、両建て向きのおすすめ最強通貨ペアについて紹介していきます。
AND/NZD
1つ目の通貨ペアは、2015年以降から現在まで長期的なレンジ相場を形成していることで有名なAND/NZDです。
上のチャートを見てわかる通り、1.0000~1.1000を買いレンジ、1.0600~1.1600を売りレンジとして、重複する1.0600~1.1000の両建てで大きな利益を狙う自動売買が流行しました。
特に1.1000のレート帯ではレジスタンスラインの影響が強くみられるため、売りのタイミングとしては絶好の狙い目になると考えられます。
EUR/GBP
2つ目の通貨ペアは、2010年以降から現在まで長期的なレンジ相場を形成していることで有名なEUR/GBPです。
レンジの範囲が少し広いものの、0.75000~0.85000を買いレンジ、0.85000~0.95000を売りレンジとすることで、安定した利益が狙える算段です。
ただ、EUR/GBPは売り注文でスワップが付与されるため、両建てせずに売りメインで長期的な戦略を組むのも良いでしょう。
NZD/USD
3つ目の通貨ペアは、2015年以降から現在まで長期的なレンジ相場を形成しているNZD/USDです。
0.55000~0.65000を買いレンジ、0.65000~0.75000を売りレンジとする両建て戦略が狙い目で、レンジ幅も狭いため資金も少額で済みます。
また、レンジ幅は狭いものの活発な値動きを見せることが多いため、利益の積み重なる早さも魅力の1つです。
上昇しても下落しても、すぐに含み益を抱えるメリットがあり、またレンジ相場ゆえに反転の期待も大きいため、含み損が大きくなりすぎることもありません。
両建てでコンスタントかつ効率よく利益を取りたいのであれば、値幅の狭いレンジ相場を持つ通貨ペアを狙っていきましょう。
USD/CHF
4つ目の通貨ペアは、2011年以降から現在まで長期的なレンジ相場を形成していることで有名なUSD/CHFです。
0.85000~0.95000を買いレンジ、0.95000~1.05000を売りレンジとする両建て戦略が有効ですが、買い注文でそこそこスワップが付与される点も見逃せません。
ただ、CHFはJPYと同じく安全資産として見られる傾向には注意が必要です。
なるべく口座内で通貨ペアを偏らせないよう、USD/CHFとUSD/JPYは混在させないことをおすすめします。
両建てが最強ではなくなるタイミングについて
数あるFX手法の中でも、両建ては使いどころを特に見極める必要があります。
ここでは、両建てを見送るべきタイミングについてお伝えしていきます。
スプレッドが広がるとき
両建てはリスクヘッジに有用ですが、ノーコストで行えるわけではありません。
両建てを始めた瞬間はスプレッドによるコストが生じるため、ポジション量やスプレッドの広がり具合によっては、かなりの出費を伴います。
ここぞという場面や使いどころを予め決めておくか、両建てという選択肢に追い込まれないよう、日ごろから小まめな損切りを徹底しておくことも一案です。
マイナススワップが膨らむとき
ポジションを保有することで、スワップポイントが付与されることになりますが、これは一律決まった値ではありません。
金利によって変動することはもちろん、そもそも買いポジションと売りポジションで付与される額が異なることがあります。
そこで厄介となるのが、買いスワップ「+10」売りスワップ「-15」のように、両建てをした際に生じるスワップポイントの合計がマイナスとなるタイミングです。
このような状況においては、両建てを継続する以上スワップを支払い続けることになりますので、買い・売りスワップのバランスが取れているかについて、口座選びの際はよく確認しておくとよいでしょう。
ボラティリティが小さいとき
ボラティリティが少ない状況、また通貨ペアにおいては両府建てのメリットを享受することはできません。
なぜなら価格の変動の少ない状況では、両建てしたとしても含み損益の数値も小さくなるため、スプレッドのコストの分だけ損をすることも考えられるからです。
一方でボラティリティが大きく、含み損がみるみる大きくなるようなタイミングでは、両建てすることで含み損の相殺も可能となります。
対象レンジを外れた時
両建てを戦略的に行うためには、両建てを仕掛ける対象のレンジ幅を決めておく必要があります。
しかし、その対象レンジを外れてしまった場合、つまり資金が追い付かず追加注文できなくなってしまった場合、利益の芽が完全になくなります。
両建てで資金がロックされるため徐々に損切りして立て直す、あるいは資金を追加で投入するしか道が残されていない状態です。
このような場合、両建ては最強どころか、利益を出せないパフォーマンス最悪の運用になってしまうため、対象レンジは予め広く構えておくべきでしょう。
両建て最強論が出回った経緯
そもそも、なぜ両建てが最強と言われるようになったのか、その理由はかつての海外FX口座の仕組みあります。
両建ては海外FX口座で原則禁止
現在では、多くの海外FX口座において両建ては禁止されています。
そうなった経緯としては「ハイレバレッジ取引」と「ゼロカットシステム」の組み合わせにより、圧倒的に勝ちやすい環境だったからです。
海外FX口座では1000倍近くのレバレッジを活用できるため、少額資金でも多量のポジションを保有することができました。
加えてゼロカットシステムにより、追証が発生することはありません。
実はこの状況においては、リスク配分がトレーダー側ではなく、FX会社側に偏っていることにお気づきでしょうか?
両建てが最強になる手法例
次の状況を考えてみましょう。
A口座:ハイレバレッジで買いポジション保有
B口座:ハイレバレッジで売りポジション保有
両建て中は、買いポジションと売りポジションが合算されるため、含み損益はほぼゼロとなるでしょう。
つまり、どちらかの口座は爆益、もう一方は爆損ということになります。
A口座(残高1万円):ハイレバ買い → 5万円の利益
B口座(残高1万円):ハイレバ売り → 5万円の損失
B口座においては5万円の損失に対し、口座内の資金は1万円であるため、通常であれば追証が発生することになります。
しかし、ゼロカットシステムがあるため、実際の損失は口座内の1万円だけで済むということです。
よって得られる利益は、A口座の5万円から1万円を引いた額4万円ということになります。
この両建てによる必勝法は現在では禁止されているものの、当時「両建て=最強」という印象を付けるには十分だったことでしょう。
FX初心者が知っておくべき両建てのポイント
ここからは、両建てを実践する際のポイントについてお伝えしていきます。
両建てで効率よく稼ぐ、あるいはリスクヘッジするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
長期トレード最中の短期トレード
上昇トレンドは、まっすぐ右肩上がりになるわけではなく、必ず「押し目」と呼ばれる凹みを経て徐々に上昇していきます。
この押し目が生まれる瞬間を狙い撃つべく、長期買いポジションを持ちながらも短期の売りポジションを仕込んでみてはいかがでしょうか。
理想としては、上の画像のように押し目を作るタイミングで両建てし、pipsを稼ぐことです。
押し目やトレンド転換の見極め方については、ダウ理論から読み解くことをおすすめしますので、ぜひこちらの記事もご一読されてみてはいかがでしょうか。
エントリー前にオーダーブックを確認する
両建てが有効なのは、逆方向のポジションを入れることで含み損を緩和すること、つまり逆方向のポジションが含み益を抱えるタイミングです。
それを正確に把握できれば苦労はありませんが、「オーダーブック」を用いることで、ある程度の目途を立てることは可能です。
例えば、買いポジションが含み損で、売りポジションを入れて両建てする際、買いポジションが優勢であれば売りポジションの投入を見送るべきでしょう。
双方のポジションが均衡している、あるいは売りポジションが優勢でチャートが下落しそうな場合に限って、両建てを検討する価値があります。
オーダーブックの具体的な使い方、詳細については以下の記事で解説しておりますので、より両建て活かすためにぜひご一読ください。
FX初心者向け「クソポジチェッカー」の使い方・見方について|オーダーブックで注文状況が一目瞭然!?FX初心者が両建てする際の注意点
両建ては、基本的には推奨されない運用手法です。
とはいえ、ここまで説明してきた通り、両建てには大きなメリットがあります。
そのメリットを確固たるものにするためも、両建ての際は以下の注意点を留意しておきましょう。
出口戦略を定める
両建ての一番難しいところは、最終的にどうやってポジションを手仕舞いにするのかということです。
上述した通り両建ては含み損益が固定されるため、常に含み益を抱える一方で、含み損も抱えることになります。
そのためノーポジ状態になろうと思えば、いつかはどこかのタイミングで損切りを決行しなければなりません。
含み益を決済して含み損ポジションだけ残してしまうと、その後ズルズルと傷口が広がっていくことも考えられますので、両建てする際は予めポジションの出口、シナリオを決めておくことをおすすめします。
両建ての規定を確認する
両建てを行う際は、扱うFX口座の規定をよく確認しておく必要があります。
というのも、一部のFX口座(特に海外口座)ではあらかじめ両建てを禁止していたり、ポジション量やポジション保有期間に制限を設けている場合があるからです。
また、両建てポジションによって支払うマイナススワップが大きくなる、買いと売り双方の証拠金が必要になるなど、思わぬ見落としもあるかもしれません。
両建てで余計な損失やリスクを増やさぬよう、FX口座選びの時点で両建てに関する規定をチェックしておきましょう。
まとめ:両建ては最強ではないが役に立つ!
本記事では、「両建ては最強なのか」その真偽や、そう言われるようになった経緯についてお話ししました。
そもそも両建ては推奨される手法ではありませんが、両建てによるリスクヘッジやエントリーチャンスを広げたいのであれば、本記事でお伝えした内容を踏まえておくとよいでしょう。
ただ理想をいえば、含み損に苦しめられずコンスタントに利益が取れるようになりたいところです。
両建ては最強と言われたのは過去の時代であり、現代では諸刃の剣であることを覚えておいてください。
以上、参考にしていただけますと幸いです。