フラッシュクラッシュとは?過去事例から分かる原因と対策について

フラッシュクラッシュに備えておかなければ、ある日突然、口座の資金が吹き飛んでしまうかもしれません。

そもそもフラッシュクラッシュとは、どういった事象で、また何が原因で引き起こされるものなのでしょうか?

本記事では、FXトレーダーとして知っておきたい、フラッシュクラッシュの過去事例、またそこから分かる原因と対策について解説していきます。

フラッシュクラッシュとは?

フラッシュクラッシュとは、為替相場や株式市場が瞬間的に暴落(暴騰)することであり、以下の特徴を持ちます。

  • 前兆なく、突然価格の変動幅が急激に拡大すること
  • 価格が一瞬にして急落/急騰すること
  • 人工知能によるアルゴリズム取引によって引き起こされること

何の前触れもなく突発的に起こる事象のため、基本的には予想できるものではありません。

また予想外の展開に強制ロスカットが執行されてしまい、退場を余儀なくされるトレーダーも多いことで有名です。

フラッシュクラッシュの発生頻度

フラッシュクラッシュは、FX相場に限らず、ダウ・株式・仮想通貨市場においても同様、数年に一度の頻度で不定期に繰り返されています。

例えば直近5年間で考えても、アップルショックコロナショック(後述)などが起きており、やはり多くのトレーダーが退場に追い込まれる事態となりました。

また一説によれば、大口が導入している人工知能が意図的に市場を操作して、フラッシュクラッシュを引き起こしているとも言われています。

そのため、今後ますます人工知能によるトレードが主流になることを考えると、フラッシュクラッシュの頻度は多くなっていくと考えられるでしょう。

フラッシュクラッシュの原因は?

フラッシュクラッシュが発生する原因については色々な議論がありますが、その詳細については不明なままです。

しかし、一般的に考えて原因はこういったものだろう…という目処は立っていますので、本節ではそちらについて紹介していきたいと思います。

原因1:人工知能の仕掛け

ヘッジファンドや機関投資家の要するトレード用人工知能は、個人トレーダーのポジション状況を全て把握しています。

そのため、どのタイミングで、どれ程度圧力をかければ、どれくらい強制ロスカットに追い込めるのか、売買アルゴリズムを用いて容易にシミュレート可能です。

そして、人工知能側から見て各条件が揃った時、フラッシュクラッシュを誘発させ、トレーダーを退場に追い込む…。

価格が下がった通貨を安く買い込み、一気に利益を出すというのが一連の流れになります。

だからこそフラッシュクラッシュの後は、基本的にすぐにレートが元の水準に戻ってくるというわけですね。

原因2:ファット・フィンガー

フラッシュクラッシュは、機関投資家のヒューマンエラーによって引き起こされる…という考えもあるようです。

確かに、機関投資家のような大金を投入できる存在であれば、桁を1つ間違えただけでも相場に与える影響は甚大なものとなるでしょう。

このような人的ミスをトレーダー間ではファット・フィンガーと呼び、外人の太い指がキーボードの入力操作を誤らせるという言葉遊びから来ています。

とはいえ上述したように、これからはさらに人工知能を導入する機関投資家が増えてくると予想できるので、ファット・フィンガーによるフラシュクラッシュは起こりにくくなると考えられるでしょう。

原因3:ファンダメンタル的な情報

最もフラッシュクラッシュを引き起こしやすいものとしては、やはりファンダメンタル的な要因が挙げられます。

例えば、ここ最近の話で言えば、トルコ政府の為替補填措置です。

連日チャートが下落している中、突如としての発表だったため、ショートポジションで攻めていたトレーダーは、大きな被害を受けたでしょう。

たった数時間の間に、トルコリラの価値が1.5倍にまで上昇したわけですから、相場がクラッシュした典型例といえます。

フラッシュクラッシュの事例

ここからは、フラッシュクラッシュの過去事例について紹介していきます。

参考までに、米ドル円が瞬間的にどの程度下落したのかを掲載していくので、現在運用中の口座がそのクラッシュに耐えきれるのか、ぜひ検討してみてください。

リーマンショック(2008年10月24日)

  • 発端:リーマン・ブラザーズの経営破綻
  • 米ドル円の下げ幅:7.31円

金融市場全体に影響を与えたリーマンショックは、為替市場において7円以上も円高に偏らせました。

またフラッシュクラッシュは、瞬間的な下落のうちに買い戻しが入って、一定水準まで回復するのが通例ですが、リーマンショック後は数年間も回復しておりません。

連日下落が続く中、最後の一撃といわんばかりのフラッシュクラッシュによって、一体どれほどのトレーダーが退場に追い込まれたのでしょうか…。

ギリシャショック(2010年5月6日)

  • 発端:ギリシャ政府による財政赤字の隠蔽発覚
  • 米ドル円の下げ幅:5.99円

当時、安定国家として考えられていたギリシャが、実は財政赤字が半端なくヤバいらしい…という事実発覚から、その余波が世界中に広がることになりました。

ギリシャでは一般的にユーロが使われており、ユーロは米ドルに続いて世界第二位の流通量を誇ります。

ユーロを介してギリシャに投資していた投資家たちは、早々に撤退し、日本円のような安全資産にシフトしたことから、為替相場が大きく反応したようですね。

チャイナショック(2015年8月24日)

  • 発端:人民元の為替レート基準値の引き下げ
  • 米ドル円の下げ幅:5.22円

チャイナショックは、中国の人民元の切り下げ(中国の通貨、人民元の基準となる為替レートの水準を下げること)を発端として、市場に大きく影響を与えました。

引き下げに至った理由としては、中国政府が輸出を強化するためであり、そこから人民元で資産を持つ国内富裕層の多くが人民元を売りに出したようです。

中国人が資金を海外に逃がすにあたって、地理的に近い日本を選びやすかったということ、またそれを見越して多くのトレーダーが円買いのトレンドに飛び乗ったこと、これらが重なり当時は円高は大きく円高に傾く事態となりました。

ブレグジット(2016年6月24日)

  • 発端:イギリスのEU連合離脱
  • 米ドル円の下げ幅:8.505円円

ヨーロッパの中心国家ともいえるイギリスがEUを離脱するとは、いったい誰が予想できたことでしょうか?

当時その衝撃は、瞬く間に世界中に広がることになり、EUの根幹をなすユーロ通貨に大きく不信感が持たれることになりました。

またチャートを見ていただければ分かりますが、EU離脱によって引き起こされたフラッシュクラッシュは、他と同様大きな陰線の後に大量の買戻しが入っていることが分かりますね。

アップルショック(2019年1月3日)

  • 発端:2019/1/2のNY市場引け後に発表された、米アップルの業績下方修正
  • 米ドル円の下げ幅:3.92円

2019年1月3日の早朝に引き起こされたアップルショックは、正月の薄商いを狙った「ヘッジファンドによる売り仕掛け」と考えられています。

米アップルに関するネガティブな情報を皮切りに、東京市場が休場という状況下での仕掛けであり、なおかつ早朝7:30という時間帯。

その時間帯からチャートを見ているトレーダーは少なく、多くのトレーダーが為す術もなく強制ロスカットに追い込まれる事態となりました。

今でこそトレーダー間では常識となりつつある「連休明けは狙われやすい」という認識は、このアップルショックから浸透したように思えます。

コロナショック(2020年3月9日)

  • 発端:2020/3/9 新型コロナウィルス蔓延の懸念から
  • 米ドル円の下げ幅:3.73円

新型コロナウィルス蔓延の懸念から、2020年は2月以降は円高に傾き続け、含み損を抱えるトレーダーが増えていく中で、2020/3/9にダメ押しのクラッシュが入りました。

当時は毎週1円以上下落しており、どこまで落ちるのか不安なムードが漂っていましたが、このクラッシュを区切りとして値動きが一段落することになります。

ちなみに、平日の午前中というチャートを見れる人が少ない時間帯の仕掛けであったことから、戻しが入った後からクラッシュの存在を知った人も多いようです。

フラッシュクラッシュへの対策方法は?

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予測不能なフラッシュクラッシュ、どのように対策すべきなのでしょうか?

以下より具体的な対策を3点紹介させていただきますが、ありきたりと思わず、重々念頭に置かれてトレードに取り入れてみてください。

対策1:レバレッジを掛けすぎない

極論言ってしまえば、レバレッジが25倍を超えなければ、つまり証拠金維持率が100%を下回らなければ、強制ロスカットが執行されることはありません。

そしてレバレッジに負担をかけてしまう最たる原因は、フラッシュクラッシュによって大きく膨らんだ含み損です。

現状含み損を抱えていない段階では、証拠金によってのみレバレッジを圧迫することになりますが、暴落の最中では含み損が雪だるま式に増えていくことを忘れてはなりません。

日頃から、現在レートから10円(=1000pips)逆行しても耐えきれる運用であれば、過去のフラッシュクラッシュから考えても助かる可能性は高いでしょう。

対策2:逆指値の設定

フラッシュクラッシュのような瞬間的な暴落時には、成行決済をまともに通せないため、急遽損切を入れようとしても後の祭りです。

というのも、各機関投資家がHFT(人工知能・システムを用いた超高速取引)を駆使して大量の発注を行うため、FX会社や取引所のサーバーに大きく負担がかかることになるからです。

そのため、日頃からポジション1つ1つに逆指値を設定し、自動で損切りを行えるよう構えておくことが重要となります。

デイトレードのように短期でポジションを手放す方にとっては問題ありませんが、スワップ狙いやスイングトレードのように長期で保有する方は、ぜひ入念に逆指値を仕込んでおきましょう。

対策3:両建て

何としても暴落をやり過ごしたい…という方は両建てによって耐える手段も残されています。

短時間で数百pipsも変動するフラッシュクラッシュにおいても、ある程度の段階を経て、大きな開きに至ります。

そのため、フラッシュクラッシュの初動を捉えることができれば、両建てによって含み損が今以上に膨らむことを防げるでしょう。

ただ留意していただきたいのは、両建てはあくまでも一時しのぎ的な措置であり、本来であれば経済合理性を欠く行為です。

安易に両建てでレントリーするのではなく、ポジションの出口が明確になっている状況に限り、活用するべきといえるでしょう。

まとめ:フラッシュクラッシュに耐えきれる運用を徹底しよう!

本記事では、FXにおけるフラッシュクラッシュの特徴について、以下のポイントを中心に解説しました。

  • フラッシュクラッシュの概要について
  • フラッシュクラッシュが引き起こされる原因
  • フラッシュクラッシュの過去事例
  • 対策方法3選

記事内でもお伝えした通り、フラッシュクラッシュはいつ訪れるのか分かりません。

唯一分かることは、また次もやってくるということ。

そのため日頃から、いつフラッシュクラッシュが引き起こされても耐えきれるように、安全な運用を心がけましょう。

すぐに大きな買戻しが入る点もフラッシュクラッシュの特徴であるため、強制ロスカットさえ免れることができれば、逆に大きく儲けるチャンスと考えることもできます。

強制ロスカットの具体的な対策はコチラの記事でも紹介しておりますので、参考にしていただければ幸いです。