ポンド円 153円を挟んだ下げ渋り持ち合い、下放れ警戒続く

ポンド円 153円を挟んだ下げ渋り持ち合い、下放れ警戒続く

おはようございます。大塚亮です。

2021年11月10日の相場分析です。

概況

ポンド円の11月9日終値は153.051円、前日比0.546円安と下落した。取引レンジは153.634円からから152.727円。

11月4日夜に英中銀が利上げを見送り量的金融緩和規模も現状維持したことからポンドドルが急落となりポンド円は11月2日夕安値を割り込んで153円台へ一段安した。11月5日夜の米雇用統計通過後にはドル安となりポンドドルがやや戻したもののドル円の下落が続いたためにポンド円は戻しきれず、8日と9日はドル円が一段安、ポンドドルは9日夜まで戻り高値を切り上げたものの円高に圧された状況は解消されず、9日夜以降はドル円の下げが一服するもポンドドルの戻りも一巡したため、ポンド円は153円を挟んでの膠着状態から抜け出せずにいる。

注目情勢 12月の利上げ期待は薄い

11月4日夜の英中銀MPC(金融政策委員会)は利上げを見送り量的緩和規模も現状維持とした。物価上昇と10月後半までのペイリー総裁発言等を踏まえて市場は10月末までの間を利上げ予想としていたが、直前には利上げ見送り感が優勢となっていたところ、利上げ見送りが決定されたためにポンドは失望売りに見舞われた。

11月4日時点では、景気が想定通りに推移するなら「向こう数か月で利上げが必要になる」可能性があるとし、11月8日にはベイリー総裁が「物価上昇が賃金上昇につながっていると判断されれば英中銀は対応する」として先行きの利上げ可能性を示唆したが、当面は現状維持での様子見が続くのではないかと市場は受け止めて利上げ期待は盛り上がっていない。

11月9日には英中銀のブロードベント副総裁が「ロックダウン直後の労働力不足が一部セクターの賃金を押し上げており短期的なインフレを促進させる可能性はあるが、労働市場は時間の経過とともに落ち着きを取り戻す」として賃金上昇からのインフレ進行もいずれ落ち着くとの見通しを示した。今後の状況次第ではあるが、ECBや米FOMCが利上げを急がない中で英中銀も足並みを揃えている状況だろう。

高インフレ継続への警戒感

11月9日に英国立経済社会研究所(NIESR)はサプライチェーンのボトルネックと英国のEU離脱の影響により英経済は今後数年間にわたり停滞して高インフレが持続する可能性があるとの見通しを示した。同所はインフレ見通しを2022年に5%に達するとする一方、英国の成長率はパンデミックからのリバウンドで2021年に6.9%と回復するものの2022年に4.7%、2023年に1.7%、2024年に1.3%と鈍化してゆくとした。また英中銀による利上げは2022年第2四半期(4-6月)に0.5%の引き上げと予想した。

インフレ抑制へ利上げを急げば景気回復の腰折れを招き、利上げを先送りすればインフレから通貨安と景気停滞をもたらすとすれば中銀の舵取りも難しい。

11月11日に英国の7-9月期GDP速報の発表がある。市場の事前予想では前期比1.5%で4-6月期の5.5%から大幅低下、前年同期比は6.8%で前期の23.6%から大幅鈍化と見込まれている。前期が昨年のコロナショック直撃時との比較だったことで大幅な上昇となっていたために7-9月期は鈍化して当然だが、景気回復への力強さが薄れる数字として市場が受け止めればポンド売り材料になりやすいと思われる。

短期テクニカル

ポンド円の60分足レベルでは概ね3日から5日周期での底打ちと反落を繰り返すリズムがある。

11月4日夜の急落で2日夕安値を割り込んで一段安となったが、11月8日朝安値の後はやや戻して153円を挟んだ揉み合いとなているため、現状は11月8日朝安値で目先の底を付けたものの戻しきれない状況にあると思われる。8日朝安値割れを回避するうちは上昇余地も残るが、8日朝安値割れからは新たな下落期入りとして11日朝から15日朝にかけての間への一段安が警戒される。

60分足の一目均衡表では横ばい推移のため遅行スパンは実線と交錯を繰り返して方向感に欠ける。先行スパンからは転落しているが横ばい推移のため上抜きやすい位置でもある。

強弱転換目安を8日朝安値152.668円と8日深夜高値153.655円を上下いずれへ抜けるのかにより判断し、8日深夜高値を超える場合はさらに戻りを試すとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、8日朝安値割れからは一段安入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月9日夜からの下落で50ポイント以下の推移となっている。揉み合い中のため上昇感が強まるには60ポイントを超える上昇が必要であり、50ポイント以下での推移中は下向きとして30ポイント割れを目指しやすいとみる。

11月10日の売買戦略

円高継続の一方でポンドドルも軟調な動きの範囲にあるため、当面は戻り売り有利の情勢とし、153円を挟んだ揉み合いからの下放れ警戒とみる。

153.20円から153.60円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。153円以下での推移中は下向きとし、8日朝安値152.668円割れからは152.00円前後試しとし、下げ足が速まる場合は151円台後半(151.85円から151.50円)へ向かう可能性もあると注意する。

11月10日の主な予定

  • ドイツ
  • 16:00 10月 消費者物価指数改定値 前月比 (9月 0.5%、予想 0.5%)
  • 16:00 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.5%)
  • ユーロ圏
  • 18:30 エルダーソンECB理事、講演
  • 米国
  • 22:30 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 0.5%、予想 0.6%)
  • 22:30 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 5.4%、予想 5.8%)
  • 22:30 10月 消費者物価コア指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.4%)
  • 22:30 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 4.0%、予想 4.3%)
  • 22:30 新規失業保険申請件数 (前週 26.9万件、予想 26.5万件)
  • 22:30 失業保険継続受給者数 (前週 210.5万人、予想 209.5万人)
  • 24:00 9月 卸売売上高 前月比 (8月 -1.1%、予想 0.4%)
  • 28:00 10月 月次財政収支 (9月 -615億ドル、予想 -1790億ドル)