ポンド円 ポンド安と円安が交錯するもポンド安に圧され気味の推移

ポンド円 ポンド安と円安が交錯するもポンド安に圧され気味の推移

おはようございます。大塚亮です。

2021年11月12日の相場分析です。

概況

ポンド円の11月11日終値は152.451円、前日比0.209円安と続落した。取引レンジは153.012円からから152.393円。

11月4日夜に英中銀が利上げを見送ったことでポンドドルが急落したことをきっかけにポンド円は153円台へ急落、その後は153円を割り込むところを買われて153円を挟んだ持ち合いとなっていたが、11月10日夜の米消費者物価上昇率が市場予想を大幅に上回ったことによる米長期債利回り急伸からドル全面高となり、ドル円が急伸する一方でポンドドルが一段安に陥ったため、ポンド円は10日深夜に小反発したところから一段安となって10月20日以降の安値を更新した。

11月11日は夕刻に英国の7-9月期GDP速報、9月の英貿易収支等の発表があったが全般に低調な内容でポンドドルの下落が継続、ドル円が114円を挟んで上昇一服となっていたためにポンド円はポンドドルの下落に推されて12日早朝には152.356円まで安値を切り下げた。

12日午前序盤はポンドドルが続落する一方でドル円が11日昼高値を超えて一段高に入ったことによる円安効果でやや戻しているが、ポンドドルの低調さが続くうちは円安で一時的に戻しても売られやすい状況と思われる。

注目材料 英国7-9月期GDPは予想を下回る、景気回復の出遅れ感

英国民統計局が11月11日夕刻に発表した2021年7-9月期の英国GDP速報値は前期比1.3%増となり4-6月期の5.5%から鈍化、市場予想の1.5%を下回った。前年同期比では6.6%増となり4-6月期の23.6%から大幅に鈍化して市場予想の6.8%も下回った。

4-6月期の前年同期比はコロナ不況が直撃した昨年同期との比較で急増だったものの、他の主要国と比較すると回復力が低めであり、統計局によれば英国の経済規模は2019年末時点を2.1%下回り、G7においてはドイツ、イタリア、フランスよりも回復が鈍いという。米国の景気回復度合いと比較しても勢いに欠ける状況にあり、今後はインフレ進行による影響や感染再拡大及びサプライチェーンの混乱継続により景気回復の勢いで他の主要国に後れを取っている印象が高まる可能性がある。

月間ベースのGDPは8月が速報の0.4%から0.2%へ下方修正され、9月は0.6%増だった。

9月の鉱工業生産は前月比0.4%減となり市場予想の0.2%増を下回り8月の1.0%増から悪化した。前年同月比は2.9%増だったが8月の4.0%及び市場予想の3.1%を下回った。

注目材料 英国の貿易赤字は拡大、輸入増加

英国民統計局が発表した9月の英国の物品貿易収支は147億3600万ポンドの赤字となり8月の137億1400万ポンドの赤字から赤字幅は拡大し、市場予想の143億ポンドの赤字を上回った。輸出は前月比1.9%増、輸入は3.8%増。EUに対しては56億3300万ポンドの赤字、EU以外では91億300万ポンドの赤字だった。

サービス貿易収支は119億5900万ポンドの黒字で物品とサービスを合わせた全体の貿易収支は27億7700万ポンドの赤字で市場予想の32.56億ポンドの赤字を下回った。

世界的なパンデミックからの景気回復とエネルギー資源消費の拡大に対して生産と物流が追い付いていないことによる需給ギャップが物価高騰を招いており、主要国の輸入物価上昇が目立っている。この傾向がまだしばらく続くとすれば、資源エネルギー及び国際原材料、食料などの輸入依存度の高い国では輸入インフレ圧力で通貨安となりやすい。日本も輸入物価が高騰しており徐々に企業物価や消費者物価へと影響が出始めているが、英国も同様であり、今後は物価高騰による景気回復への腰折れ不安も増しやすく、インフレ対策での利上げも躊躇されやすい。英中銀が11月4日のMPCで利上げを見送り、早ければ12月会合での利上げ可能性があるとしたものの難しい舵取りを強いられそうだ。

短期テクニカル

ポンド円の60分足レベルでは概ね3日から5日周期での底打ちと反落を繰り返すリズムがある。

11月4日夜の急落が11月8日朝安値で一服して持ち合いに入り、11月10日深夜にいったん戻してからこの間の安値を更新したために11日午前時点では11月10日深夜高値を起点とした下落期入りとし、安値形成期を15日朝にかけての間と想定した。

12日早朝へ安値を切り下げているのでまだ一段安余地ありととみるが、8日朝安値から4日を経過しているので153円を超える場合はいったん上昇期に入って戻りを試すとみて12日夜から17日夜にかけての間への上昇を想定する。ただしその場合も11月10日深夜高値を超えずに戻り高値が切り下がって直前安値からの上昇幅の半値を削るところからは下げ再開を疑う。

60分足の一目均衡表では遅行スパンが実線を下回り先行スパンからも転落した状況にあるが、ジリ安推移のために遅行スパンは好転しやすい位置にある。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とするが、先行スパンを超えてくる場合は戻りを試す流れとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月12日午前に30ポイント台序盤へ低下してからやや戻している。50ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちはもう一段安余地ありとみて30ポイント割れからは20ポイント前後への低下を想定する。55ポイントを超えてその後も50ポイント台を維持するところからは戻りを試す流れに入るとみる。

11月12日の売買戦略

ドル全面高の中でドル円の急伸とポンドドルの一段安が交錯する状況のため、円安優勢で戻りを試す可能性もあるところだが、ポンドドルの下落基調継続を踏まえれば円安による上昇場面では戻り売りにつかまりやすいとみる。

153.00円超えからは10日深夜高値153.749円手前を試すとみるが、153.50円前後では戻り売りされやすいとみる。安値更新からは152円、さらに151円台中盤(151.70円から151.30円)を目指すとみる。

11月12日の主な予定

  • APEC首脳会議
  • 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)閉幕
  • 英国
  • 23:00 ハスケル英中銀委員、講演
  • ユーロ圏
  • 19:00 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -1.6%、予想 -0.5%)
  • 19:00 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 5.1%、予想 4.1%)
  • 22:50 レーンECB理事、講演
  • 米国
  • 24:00 9月 雇用動態調査(JOLT)
  • 24:00 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (10月 71.7、予想 72.4)
  • 26:10 ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁裁、講演