ポンド円 152円台で下げ渋るが10月後半からの下落基調の範囲

ポンド円 152円台で下げ渋るが10月後半からの下落基調の範囲

おはようございます。大塚亮です。

2021年11月15日の相場分析です。

概況

ポンド円の11月12日終値は152.784円、前日比0.333円高と上昇した。取引レンジは152.934円からから152.356円。

10月20日からドル円とポンドドルの下落が重なったためにポンド円10月20日高値158.219円を起点として下落に転じたが、11月4日夜に英中銀が利上げを見送ったことでポンドドルが急落、さらに11月10日の米消費者物価上昇率の跳ね上がりによるドル全面高によりポンドドルが9月29日安値1.34120ドルを割り込んで1.33ドル台へ一段安したことでポンド円は152円台まで安値を切り下げてきた。

11月10日にポンドドルが下落した局面ではドル円が急反発したことでポンド円は支えられ、11月12日はドル円が高値更新後に反落したもののポンドドルの下落も一服してやや持ち直したことで午前安値152.356円を付けたところからはやや持ち直している。

テクニカルポイント ポンドドルは年初来安値を更新

ポンドドルは11月10日の下落時に9月29日安値を割り込んだため、6月1日高値以降の最安値更新となった。

昨年3月のコロナショック暴落から出直って今年2月24日高値1.42351ドルへ上昇し、いったん調整安を入れたところから6月1日に1.42493ドルへ上昇してわずかに高値を更新したが、両高値がダブルトップ型となって下落に転じてきた。7月20日安値1.35721ドル、9月29日安値1.34120ドルと安値を切り下げ、戻り高値も7月30日の1.39825ドルから9月14日の1.39122ドル、10月20日の1.38339ドルと切り下げてきており、現状は0.04ドル前後規模の騰落を繰り返しながら右肩下がりの下降チャンネルでの推移となっている。

既に6月1日高値からは5か月を超える下落規模であり、昨年3月底以降の上昇途中における調整規模を超えており、2018年4月天井からの下落時などに匹敵する動きとなっている。

同様にユーロドルも1月6日と5月25日高値をダブル天井型として下落基調にあり11月12日には年初来安値を更新している。ドル高感が強まっている状況にあり、インフレ進行の中で輸入依存度が高く、金融緩和縮小から利上げへの積極姿勢がやや欠けることでドル高に圧されている印象だ。ドル全面高ならドル円は上昇してポンド円を支えるものの、あくまでも原市場であるポンドドルの下落基調が続くようだと、ポンド円としては円安依存で戻したところは売られてポンドドルが一段安するところで下げ足が速まる展開につかまりやすいと思われる。

注目情勢 欧州の感染拡大

オーストリア政府は11月14日に感染拡大を踏まえてワクチン接種を終えていない人を対象としたロックダウンを15日から開始するとした。感染急増により集中治療室病床が逼迫しつつあるという。オーストリアの人口は907万人だが11月12日の感染者数は1万人を超えている。

英国でも7月17日に第三波の新規感染者のピークを5万4198人で付けてからは記録を更新していないものの8月序盤に2万人台まで減少してからぶり返しており10月1日に5万1427人に拡大、11月12日も4万人を超えている。

ドイツでは11月11日に5万0377人となり過去最高を更新、第三波のピークだった4月14日の32546人を大幅に超えているが、10月後半に1万人を切っていたところからの急増となっている。ロシアも連日4万人前後規模の感染者数で過去最高水準にある、フランスも徐々に増加するなど、世界規模では欧州が新たな震源地状態となっている。

ワクチン普及もある程度は進んでいてもワクチン未接種者による感染や接種完了者でのブレイクスルー感染もあり、以前のような重症化率や死亡率の高さではないとしても病床圧迫、経済活動の萎縮、物流や生産の停滞が長期化することによるインフレ進行、年末年始への景気回復の腰折れなどが警戒される。

注目材料 17日の英CPI、英中銀への利上げ催促強まるか

英国では11月16日に雇用統計、17日に物価上昇率、18日に小売売上高の発表が相次ぐが、特に17日の消費者物価、小売物価などの上昇率に注目が集まる。
市場の事前予想では10月の英国消費者物価上昇率は前月比で9月の0.3%から0.8%へ加速、前年同月比では9月の3.1%から3.9%へ伸びると見込まれている。消費者物価のコア指数上昇率も前年比で3.1%と予想されている。

小売物価指数では前年比が9月の4.9%から5.7%へと加速する予想となっている。
英中銀は10月時点では11月と12月の二会合連続で利上げするのではないかとの予想が出ていたが、11月4日会合では利上げを見送った。しかし消費者のインフレ警戒感は強まっており生活への支障も出始める状況にある。世界的な景気回復による消費拡大に対して生産物流の停滞が需給ギャップを発生させていること、特に英国ではブレクジットによる労働者不足への影響も出ており、インフレの継続と深刻化への対処も政策的に求められるところだが、景気回復の腰折れのきっかけとなりかねない利上げに対する躊躇も見られる。物価上昇率が予想を超える場合、利上げ催促的な英長期債利回り上昇も発生しやすくなるが、それ以上にインフレによる通貨安を招いてポンド安が進行する可能性も警戒される。

短期テクニカル

ポンド円の60分足レベルでは概ね3日から5日周期での底打ちと反落を繰り返すリズムがある。

11月12日朝へ安値を切り下げたところからはやや戻し気味の推移に入っているので、現状は11月8日朝安値から4日目となる12日朝安値で目先の底を付けて戻りを試している印象だ。勢いには欠けるために152.60円割れからは下げ再開注意とし、12日朝安値152.356円割れからは新たな下落期入りとして17日朝から19日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月12日朝安値からのジリ高により遅行スパンが好転、先行スパンへ潜り込んで突破を試しつつある。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月12日午前に30ポイント台序盤へ低下してから持ち直して50ポイント台を回復している。50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、60ポイント台後半は反落注意とし、45ポイントを割り込むところからは下げ再開として20ポイント台への低下を想定する。

本日の売買戦略

ドル全面高によるポンドドルの下落基調に圧されてポンド円も10月20日高値以降の下落基調の範囲にあると思われるが、週替わりで先週末までの下げも一服しやすいところと思われる。目先はやや戻りを試しつつも11月10日深夜高値153.749円超えは難しいとみて153.35円から153.70円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。

152.60円割れからは下げ再開注意とし、12日朝安値152.356円割れからは152.00円、151.75円、151.50円を順次試してゆく流れとみる。

11月15日の主な予定

  • 米中首脳会談(オンライン)
  • 米商務長官、米USTR代表ら日本などアジア歴訪
  • 休場 メキシコ(革命記念日)、ブラジル(共和制宣言記念日)
  • 英国
  • 18:30 ハスケル英中銀委員、講演
  • 23:30 ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言
  • ユーロ圏
  • 19:00 9月 貿易収支・季調済 (8月 111億ユーロ、予想 115億ユーロ)
  • 19:00 9月 貿易収支・季調前 (8月 48億ユーロ)
  • 19:00 ラガルドECB総裁、発言
  • 米国
  • 22:30 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 19.8、予想 22.0)

今週の英国関連主な予定

  • 11/16(火)
  • 16:00 10月 失業保険申請件数 前月比 (9月 -5.11万件)
  • 16:00 10月 失業率 (9月 5.2%)
  • 16:00  9月 失業率・ILO方式 (8月 4.5%、予想 4.4%)
  • 11/17(水)
  • 16:00 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.3%、予想 0.8%)
  • 16:00 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 3.1%、予想 3.9%)
  • 16:00 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 2.9%、予想 3.1%)
  • 16:00 10月 小売物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 0.8%)
  • 16:00 10月 小売物価指数 前年同月比 (9月 4.9%、予想 5.7%)
  • 11/18(木)
  • 米国・カナダ・メキシコ首脳会議(ワシントン)
  • 11/19(金)
  • 09:01 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -17、予想 -18)
  • 16:00 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.2%、予想 0.5%)
  • 16:00 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -1.3%、予想 -1.9%)
  • 16:00 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 -0.6%、予想 0.6%)
  • 16:00 10月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (9月 -2.6%、予想 -2.8%)