ポンド円 ユーロ安に圧されるもドル円の上昇で確り

ポンド円 ユーロ安に圧されるもドル円の上昇で確り

お早うございます。大塚亮です。

2021年11月16日の相場分析です。

概況

ポンド円の11月15日終値は153.082円、前日比0.298円高と小幅続伸した。取引レンジは153.280円からから152.626円。

10月20日からの下落基調が続いてきたが、11月12日朝に152.356円まで下げた後は下げ渋りからややジリ高の推移となり、11月15日は夜にかけてのポンドドルの上昇とドル円の反騰により153.280円まで戻り高値を切り上げた。

深夜以降はユーロドルの急落によるドル高感に圧迫されてポンドドルがやや失速したものの1.34ドル台を維持して確りし、ドル円の反騰基調も継続したために153円台を維持して戻り高値切り上げを伺う動きとなっている。

注目材料 英中銀の利上げ判断、ぎりぎりの情勢

英中銀のベイリー総裁は11月15日の英下院財務委員会で「インフレをめぐる状況に非常に不安を感じている」「目標値を上回るインフレ率を当然望んでいない」とし、11月4日の英中銀MPC(金融政策委員会)での利上げ見送りは「個人的には非常にぎりぎりの判断だった」と述べた。

10月時点では物価上昇を踏まえて英中銀は11月と12月の2会合連続で利上げするのではないかとの市場観測が強まっていたが、利上げへの慎重姿勢から11月4日の会合では利上げが見送られた。またその際の判断は現状維持が7名、利上げ支持が2名だったことが公表され、「景気が想定通りに推移すれば向こう数か月で利上げが必要になるとした。

12月の次回会合はまだ先だが、物価上昇と景気回復の腰折れ懸念、欧州における感染再拡大などを踏まえて利上げに踏み切るのかどうか、難しい判断が迫られる。

ECBの利上げ消極姿勢にユーロは急落

欧州中銀ECBのラガルド総裁は11月15日の欧州議会での証言では「ユーロ圏のインフレ高進は当初の想定よりも長引く可能性があるが来年には低下に転じる」、「中期的には2%の目標を下回ると予測している」と述べた。また「エネルギー価格の高騰で購買力が圧迫されている現状では資金調達環境の過度の引き締めは望ましくなく、回復のための不当な逆風となる」と述べて利上げへの消極姿勢を示した。

ECBのパンデミック緊急対策としての資産購入については、その終了後も適切な資産購入の調整を含む金融政策により景気回復を支援することが重要」として長期的な量的緩和継続の可能性も示唆した。

ECB総裁発言が伝わるとユーロドルは急落、15日安値で1.1354ドルまで下げて年初来安値を更新したが、1月6日と5月25日の両高値をダブル天井として下落しており、10月に入ってからの1.150ドルを下値支持線とした下げ渋りも続かずに一段安に入っている。

15日夜はNY連銀景況指数が予想を大幅に上回ったことも重なってドル高が進行、ドル円が反騰したが、その他通貨の動きはまちまちだった。ポンドドルは深夜へ高値を切り上げてから失速気味だが、ユーロポンドでのユーロ売りポンド買いに支えられている印象がある。豪ドル米ドルもやや下げたものの16日午前序盤には持ち直している。ドル円の反騰と共にドル指数での比重の大きいユーロの急落がドル高感を助長しているが、ポンドドルはペイリー総裁の利上げ検討でのギリギリの状況という発言も踏まえて相対的にはまだ確りしている。物価上昇と景気を見ながら、主要国中銀のスタンスの差も意識されてドル高基調となっても各通貨の動きがまちまちな動きになる可能性もあるところだ。

注目材料 16日夕刻に英10月雇用統計の発表あり

本日16時に英国雇用統計の発表がある。

ILO方式の9月失業率についての市場予想は8月の4.5%から4.4%への改善見込みだが、9月の就業者数の増減については8月の23.5万人増から18.5万人増へ伸びがやや鈍化するとみられている。また平均賃金の伸び率についても8月の6.0%から5.0%へ低下するなど、景気鈍化への懸念がにじむ可能性もある。

市場予想よりも良好な数字になればポンド買い材料となりえるところだが、予想より悪い場合は英中銀の利上げ判断も後退しやすくなるとみてポンド売りのきっかけになりやすいと思われる。

短期テクニカル

ポンド円の60分足レベルでは概ね3日から5日周期での底打ちと反落を繰り返すリズムがある。

11月12日朝へ安値を切り下げたところからの戻りが続いていたために15日午前時点では11月8日朝安値から4日目となる12日朝安値で目先の底を付けて戻りを試しているところとしたが、11月10日夜高値153.749円手前では戻り売りにつかまりやすいとした。

16日午前にかけてジリ高基調が続いているので12日朝からの上昇基調の継続中とみるが、10日深夜高値を基準として高値形成期は15日夜から17日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるとみて、153円割れから続落に入る場合は弱気転換注意とし、15日夜の反落時安値152.626円割れからは下落期入りとして17日朝から19日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月15日夜への上昇で先行スパンを上抜いてきているので先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月15日夜の反落時に50ポイントを割り込んだが切り返しているのでまだ上昇余地ありとするが、70ポイント台は反落警戒とみる。45ポイント割れからは下げ再開として20ポイント台への低下を想定する。

11月16日の売買戦略

10月20日からの下落一服で11月12日朝安値からやや戻しているところのため、目先は戻りを試す流れを継続しやすいとみる。11月10日深夜高値153.749円前後では戻り売りにつかまりやすいとみるが、ドル円の上昇が勢い付く場合は円安主導で10日深夜高値を超える可能性もあると考える。

153円以上での推移中は上向きとし、153.70円から154円手前は戻り売りゾーンとみる。153円割れからは下向きとし、15日夜安値152.665円割れからは152円台序盤(152.30円から152.00円)へ向かう流れとみる。超えは難しいとみて153.35円から153.70円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。

11月16日の主な予定

  • 英国
  • 16:00 10月 失業保険申請件数 前月比 (9月 -5.11万件)
  • 16:00 10月 失業率 (9月 5.2%)
  • 16:00  9月 失業率・ILO方式 (8月 4.5%、予想 4.4%)
  • ユーロ圏
  • 19:00 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 2.2%、予想 2.2%)
  • 19:00 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 3.7%、予想 3.7%)
  • 25:10 ラガルドECB総裁、発言
  • 米国
  • 22:30 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.7%、予想 1.2%)
  • 22:30 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.8%、予想 1.0%)
  • 22:30 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 1.0%)
  • 22:30 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 0.1%、予想 1.0%)
  • 23:15 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.3%、予想 0.7%)
  • 23:15 10月 設備稼働率 (9月 75.2%、予想 75.8%)
  • 24:00  9月 企業在庫 前月比 (8月 0.6%、予想 0.6%)
  • 24:00 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 80、予想 80)