ポンド円は下げ渋り ドル円の下落継続、ポンドドルは戻すも勢いに欠ける

ポンド円は下げ渋り ドル円の下落継続、ポンドドルは戻すも勢いに欠ける

おはようございます。大塚亮です。

2021年11月9日の相場分析です。

概況

ポンド円の11月8日終値は153.597円、前日比0.612円高と反発した。取引レンジは153.655円からから152.668円。

11月4日夜の英中銀MPC(金融政策委員会)が利上げを見送り政策金利と量的金融緩和の規模を現状維持したことからポンドドルが急落、ポンド円も11月2日夕安値を割り込んで一段安となり4日深夜には153円台序盤へ下落した。その後もジリ安が続き、11月5日の米雇用統計通過後はドル安となったことでポンドドルが下げ一服で戻したもののドル円の下落が継続したために5日夜から6日早朝にかけてのポンド円は軟調推移となった。

11月8日朝に152.668円まで安値を切り下げてからはポンドドルの戻りが継続したことでドル円の一段安を補ってポンド円はやや戻し気味の推移で153円台中盤へ上昇したが154円に届かない程度にとどまった。

注目材料、ペイリー英中銀総裁、インフレ対処姿勢も示す

英中銀は11月4日夜のMPC(金融政策委員会)で政策金利及び量的金融緩和規模の現状維持を決めた。10月時点での英中銀は物価上昇を踏まえて利上げの準備状況にあるとの認識を示唆していたために市場は11月会合での利上げ予想を立てたが、その後は総裁発言等もトーンダウンしていたためにMPC前段階では市場予想もそれまでの利上げ予想から現状維持へと変わっていた。

11月8日に英中銀のベイリー総裁はオンライン形式討論会で「物価上昇が賃金上昇につながっていると判断されれば英中銀は対応する」と述べて先行きの利上げ可能性を示唆した。総裁は「労働力不足による賃上げがインフレを加速させる場合は中銀は金利の面で対応する」と述べた。11月4日のMPC時点では、景気が想定通りに推移するなら「向こう数か月で利上げが必要になる」可能性を示唆していたが、市場は利上げの先送りとしてポンド売りで対応した。

10月28日の日銀、ECB、11月2日の豪中銀、4日未明の米FOMCと主要国の金融政策決定会合が続いたが、総じて物価上昇を警戒しつつもいずれ収まるとの認識を主として利上げを急がない姿勢を示した。英中銀もそれらと歩調を合わせている印象だが、今後の物価上昇や賃金上昇などによりインフレ進行が顕著になれば利上げという定石通りの政策をとるとして過度の利上げ先送り感をけん制したともいえる。

市場としては当面、主要国の物価上昇、賃金と雇用統計などを見定めながら、各中銀のスタンスの差を意識して対ドルでの強弱を決めてゆくという展開が続きそうだ。

注目情勢 円高に注意

ドル円が10月20日高値で114.69円を付けたところから調整安につかまっている。10月20日高値は年初来の最高値だったが、年初来の上昇途中においては3月31日高値から4月23日安値まで3.50円の下落、7月2日高値から8月4日安値まで2.94円の下落が入っている。今回もそれらの中間点の高値からの下落期と同様の規模となる可能性もあり、先週後半から日足が連続陰線で下落しているところを見ると、9月15日安値からの上昇幅に対する3分の1押しとなる112.82円や、半値押しの111.89円等を試す可能性も出てくると注意したい。

中長期的にはここ数年で最大級の円安ドル高基調にあり、さらに高値更新へ進んでもよいところだが、周期的に調整安が入るのが相場であり、今回はポンド円としても円高圧力に注意したいところだ。

短期テクニカル

ポンド円の60分足レベルでは概ね3日から5日周期での底打ちと反落を繰り返すリズムがある。

11月4日夜の急落で2日夕安値を割り込んで一段安となったため、11月5日午前時点では11月4日午前高値を起点とした下落期として5日夕から9日夜にかけての間への下落を想定した。

11月8日朝に安値を若干切り下げてから153円台中盤へ戻したため、現状は8日朝安値を目先の底として戻したものの底割れへの余裕も乏しい状況と思われる。このため8日朝安値割れを回避するうちは9日の日中から11日午前にかけての間への上昇余地ありとするが、8日朝安値割れからは新たな下落期入りとして11日朝から15日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月8日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンへ潜り込んだが、その後の勢いに欠けて先行スパンから転落しやすい位置にある。先行スパンからの転落を回避するうちは上昇余地ありとするが、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月4日夜の急落で20ポイントを割り込んだ後はジリ高の推移が続いてきたが、8日夜に60ポイントへ到達してからは上値が重くなり9日午前には50ポイントを割り込んできているので下げ再開が疑われる。50ポイント台を回復するなら上昇再開余地ありとするが、50ポイント以下での推移中は下向きとして30ポイント前後への下落を想定する。

11月9日の売買戦略

中勢レベルでは10月20日高値からの調整安規模がまだ深まる可能性もあり、戻り高値を切り下げては一段安を繰り返している中で8日の戻りも勢いが鈍かったため、戻り一巡からの下げ再開と一段安を警戒する。

153.50円から154円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。153円割れからは152.50円、152.00円を順次試す流れとみる。下げ足が速まる場合は152円割れへ向かう可能性もあると注意する。

11月9日の主な予定

  • 英国
  • 25:00 ベイリー英中銀総裁、討論会参加
  • ドイツ
  • 16:00 9月 貿易収支 (8月 107億ユーロ、予想 160億ユーロ)
  • 16:00 9月 経常収支 (8月 118億ユーロ、予想 170億ユーロ)
  • 19:00 11月 ZEW景況感 (10月 22.3、予想 20.0)
  • ユーロ圏
  • 19:00 11月 ZEW景況感 (10月 21.0)
  • 22:00 ラガルドECB総裁、フォーラムの開会挨拶
  • 米国
  • 21:50 ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
  • 22:30 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.5%、予想 0.6%)
  • 22:30 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 8.6%、予想 8.6%)
  • 22:30 10月 生産者物価コア指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.5%)
  • 22:30 10月 生産者物価コア指数 前年同月比 (9月 6.8%、予想 6.8%)
  • 23:00 パウエル米連銀議長、講演