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おはようございます。大塚亮です。
2021年11月29日の相場分析です。
目次
概況
ポンド円の11月26日終値は151.284円、前日比2.336円安と大幅下落した。取引レンジは153.671円からから150.720円。
11月19日夜安値152.520円から戻した後は153円台後半中心の持ち合いで推移し、25日は米国が感謝祭休場だったことで小動きだったが、26日朝から新種の変異株の脅威が報じられたことで金融市場全般がリスク回避へと走り、アジア株が大幅下落する中でドル円が急落、ポンドドルも夕刻にかけて下落したため、ポンド円は夕刻にかけて両面から圧される展開で153円台序盤の水準だったところから夕刻安値151.090円まで急落した。
夕刻からはユーロ高につれてポンドドルが反騰したもののドル円の下落が収まらなかったためにポンド円は27日未明安値で150.720円まで一段安となった。取引終了時には151円台を回復したが、当日の高安で3円近い下落幅となる日足大陰線で崩れた。
注目情勢 新変異種「オミクロン」への不安心理
WHOは11月26日にボツワナで発生して南アで急拡大した新型コロナウイルスの新たな変異株を「オミクロン株」と命名し、最高の警戒レベルであるVOC(懸念される変異種)に指定した。VOCはこれまで英国型のアルファ、ブラジル型のガンマ、インド型のデルタが指定されてきた。VOCより警戒度の低い「注目すべき変異株=VOI」には南米のラムダとミューがある。
オミクロンの発生確認は11月11日のボツワナが最初、25日に南アでの100人近い感染が確認され、26日時点では香港、イスラエル、ベルギーで確認、27日には英国、ドイツ、イタリア、28日にはオランダ、オーストラリアとカナダ等でも確認されている。英国は27日にジョンソン首相が記者会見してイングランドの公共交通機関や店舗でマスクの着用を再び義務付ける方針を表明した。
オミクロンはスパイク蛋白質の変異が大きく武漢株を元とした現在のワクチンが効かない「エスケープ株」の可能性も警戒されており、その場合は新たな対応ワクチンの設計生産が必要になるともいわれている。従来のワクチンが有効となれば市場も26日の反応は過剰だったとして楽観を取り戻す可能性はあるだろうが、世界へのオミクロン株侵入拡大が続けば不安心理はさらに助長されかねない。
注目情勢 パンデミック初期に近いリスク回避型の展開
オミクロン株への不安から11月26日の金融市場はアジア市場が始まるとリスク回避型の行動へ一挙に進んだ。日経平均は一時1000円を超える下落で前日比747.66円安、アジア株はほぼ全面安となり、欧州市場も英FT100指数が3.6%安、独DAXが4.1%安、仏CAC指数が4.7%安と大幅下落、NYダウも一時1000ドル安を超える下落で905.04ドル安(2.5%安)となった。
為替市場ではクロス円が円の買い戻しで全面安となりドル円は早朝高値115.43円から26日深夜安値113.03円まで2円を超える大幅下落、豪ドル、NZドル、南アランド等のコモディティ通貨が大幅下落、NY原油先物は前日比で10.22ドル安(13%安)の大暴落となった。しかしその一方でユーロドルが上昇、ポンドドルは夕刻まで下落したがその後は反騰して日中の下げ幅を解消した。
リスク資産の株を売り安全資産の債券を買う動きにより米長期債利回りが急低下し、独英豪等の長期債利回りも同様に低下したが、日経平均の大幅安と円高が並走したように、欧州株安とユーロ高も並走したのはユーロ圏投資家がユーロクロスのでユーロの買い戻し・換金売りを急いだ事を反映したと思われる。ポンドドルは当初にユーロポンドでのユーロ買いポンド売りに圧されたが、夕刻からはユーロ高を見てつれ高の反応へと変わって上昇したと思われる。
円とスイスフラン、ユーロも買われた状況ではあるが、リスク回避感がさらに深刻化する場合はユーロも売られ、英国でのオミクロン感染者が拡大するようだとポンドも売られる可能性があると懸念される。
注目情勢 英中銀、12月16日の利上げは見送りか
英国の物価上昇と景気回復感から英中銀は12月16日の次回会合で利上げに踏み切る可能性があるとみられてきた。10月段階では11月と12月の2会合連続での利上げ予想も出ていたほどだったが、11月はMPC委員9名のうち利上げ支持は2名にとどまり、ベイリー総裁はぎりぎりの判断で現状維持としたが利上げ時期が迫ってきていることも示唆していた。
しかし、新変異株の発生と脅威により、世界各地で渡航禁止等が相次いでいる。また新種発生前の段階で欧州の感染再拡大が深刻化してオーストリアのロックダウン入りやチェコの非常事態宣言等による規制強化の動きが拡大、景気回復の腰折れも警戒されていた矢先での新たな脅威であり、英中銀も状況を見極めずに利上げへ踏み切るわけにはいかなくなった印象だ。
英中銀のチーフエコノミストであるピル委員は11月27日に「新たな変異株やロックダウンの再導入リスクが景気回復に対する政策当局者の見方を一変させる可能性がある」「数か月以内に金利は上昇する必要があるとした英中銀のガイダンスに狂いが生じることもあり得る」と警告した。
短期テクニカル
ポンド円の60分足レベルでは概ね3日から5日周期での底打ちと反落を繰り返すリズムがある。
11月19日夜安値を起点として上昇期に入ってきたが、11月23日昼高値からは新たな高値更新へ進めずに23日夕、24日夜と小反落を繰り返したために11月25日午前時点では11月23日昼高値を起点とした調整期に入っているとし、11月24日夜安値を割り込むところからは11月25日夜ないし26日夜にかけて安値試しへ向かいやすくなると指摘した。
11月27日未明へ151円割れへと大幅下落してから29日朝に152円へ迫るところまで戻したので、11月19日夜安値から5日を経過した27日未明安値で目先の底を付けて反騰入りしたと思われる。このため底割れ回避のうちは11月29日の日中から12月1日にかけての間への上昇余地ありとするが、戻りは短命の可能性があるとみて151.30円以下での推移に入る場合は弱気転換注意として27日未明安値試しとし、底割れからは新たな下落期入りとして12月2日未明から4日早朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では11月25日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、26日の大幅下落により両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。急落後の反動高にも注意がいるところであり新たな安値更新を回避して遅行スパンが好転してくる場合はいったん戻しに入るとみるが、先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は11月26日夕刻の急落時に10ポイント台序盤へ下げ、27日未明への安値更新に際しては指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる。このため40ポイント以上での推移中は50ポイント台回復から60ポイントを目指す可能性があるとみるが、40ポイント割れからは下げ再開を疑い30ポイント割れからは再び10ポイント台を試しつつ一段安へ向かう可能性があるとみる。
11月29日の売買戦略
ドル円の大幅下落が続くのか、ポンドドルの戻りが続くのか、見定める必要のあるところだ。オミクロンが重症度の低いものとされれば市場の楽観も回復する可能性があるが、さらに悲観が強まってリスク回避型の動きが増す可能性が懸念される状況のため当面は戻り売り有利の情勢での推移を想定する。また日足レベルでは10月20日高値からの下落が11月12日までを一段目とし、底割れにより二段目の下落期に入ったところと考え、二段目の下落がしばらく続きやすいとみる。
当面、152円手前から152円台序盤にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。151.30円割れからは下げ再開を疑い、27日未明安値150.720円割れからは150円試し、さらに149円台中盤を目指す流れとみる。
11月29日の主な予定
- イラン核合意再建に向けた協議再開の予定
- 英国
- 18:30 10月 消費者信用残高 (9月 2.0億ポンド、予想 4.0億ポンド)
- 18:30 10月 マネーサプライM4 前月比 (9月 0.6%)
- 18:30 10月 マネーサプライM4 前年同月比 (9月 7.0%)
- ユーロ圏
- 19:00 11月 ユーロ圏消費者信頼感・確定値 (速報 -6.8、予想 -6.8)
- 19:00 11月 ユーロ圏経済信頼感 (10月 118.6、予想 117.5)
- 22:00 11月 ドイツ消費者物価指数・速報値 前月比 (10月 0.5%、予想 -0.4%)
- 22:00 11月 ドイツ消費者物価指数・速報値 前年同月比 (9月 4.5%、予想 5.0%)
- 米国
- 24:00 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 -2.3%、予想 1.0%)
- 24:00 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 -7.2%)
- 29:00 ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
- 29:05 パウエル米連銀議長、イベントで開会挨拶
今週の英国関連の主な予定
- 11/30(火)
- 22:00 マン英中銀委員、講演
- 12/1(水)
- 18:30 11月 英国製造業PMI・改定値 (速報 58.2)
- 23:00 ベイリー英中銀総裁、講演
- 12/2(木)
- 特になし
- 12/3(金)
- 18:30 11月 英国サービス業PMI・改定値 (速報 58.6)