豪ドル円 三角持ち合い下放れから二段目の下落、落ち着き処を探る

豪ドル円 三角持ち合い下放れから二段目の下落、落ち着き処を探る

おはようございます。大塚亮です。

2021年11月8日の相場分析です。

概況

豪ドルの11月5日終値は83.912円、前日比0.260円安と下落した。取引レンジは84.349円から83.817円。

10月21日高値86.248円で昨年3月底以降の最高値を更新した後は新たな高値更新へ進めずに安値を若干切り上げる三角持ち合いの様相だったが、11月2日の豪中銀理事会が利上げを急がない姿勢を強調したことで豪ドル売りとなって三角持ち合いから下放れした。

11月2日深夜安値84.499円から下げ渋り4日午前へいったん戻したものの4日夜は英中銀が利上げを回避したことによるポンド安をきっかけにドル高感が強まって豪ドルが売られて豪ドル円は84円割れへ下落。11月5日夜の米雇用統計後はややドル安反応となったもののドル円が下落したことで豪ドル円の上値は重く、84.0円を挟んだ揉み合い程度の推移で先週を終えた。

注目材料 豪中銀の四半期報告 成長率とインフレ見通し引き上げ

豪中銀(オーストラリア準備銀行、RBA)は11月5日に金融政策に関する四半期報告を公開した。

報告書では2021年のGDP見通しを従来の4%から3%へ下方修正したが、2022年はこれまでの4.5%から5.5%へと上方修正した。ロックダウン解除からの景気回復で今年10-12月期と来年1-3月期は内需が急回復する見通しとした。一方でインフレ見通しについては消費者物価指数の中銀トリム平均値で2022年末に2.25%、2023年終盤に2.5%と予想した。中銀のインフレ目標は2~3%であり、2023年には目標レンジの中間レベルに達すると見通した。

インフレ率を目標レンジ内に維持するためには年間で3%以上の賃金上昇が必要とし、それが実現するのは2023年終盤にとして2022年に利上げを実施する可能性は「極めて低い」との見解も示した。

11月2日の豪中銀理事会は政策金利を過去最低の0.1%で据え置き、週40億豪ドルの量的緩和による資産購入を来年2月まで継続するとしたが、YCC(イールドカーブコントロール)による長期金利の抑制政策はやめた。

注目情勢 豪長期債利回りは大幅低下

豪10年債利回りは11月2日に2.00%へ上昇して年初来の最高水準としたが、豪中銀は利上げを急がない姿勢を強調したために低下に転じ、11月5日時点では1.70%まで低下している。YCCによる長期金利抑制をやめたことで3年債利回りは10月29日に1.25%まで急伸していたところから先週末には0.87%まで低下した。

米長期債利回りも米FOMC及び米雇用統計を通過して低下しており、主要国中銀が利上げを急がない姿勢で歩調を合わせているために独英豪の長期債利回りも同調して低下している。このことは豪長期債利回りが低下したからと言って必ずしも豪ドルへの売り材料にはならないことを示しているが、米連銀よりも豪中銀が前倒しで利上げする可能性を意識してきたことの裏返しとすれば、豪長期債利回り低下による豪ドル売り圧力が米長期債利回り低下によるドル売り圧力に勝りやすい状況ともいえそうだ。

テクニカルポイント 三角持ち合い下放れから二段目の下落

豪ドル円は10月21日高値で86.248円を付けた後は、10月27日高値86.052円と11月1日深夜高値86.054円で86円台を付けたものの新たな高値更新へ進めずに86円台序盤を上値抵抗とした三角持ち合いの様相となっていた。しかし11月2日の豪中銀金融政策での利下げを急がない姿勢の強調で豪ドル売りとなって三角持ち合いの下値支持線を割り込んで下放れに入った。

11月2日深夜安値で84.499円まで下げたところから11月4日午前高値85.203円までいったん戻したものの4日夜に一段安となり、持ち合い下放れから現在は二段目の下落途中となっている。

下落基調から抜け出すには11月1日深夜高値から4日午前高値へと戻り高値を切り下げて一段安してきた右肩下がりの展開から脱却する必要がある。11月1日深夜高値と11月4日午前高値を結ぶ抵抗線は現在84.50円前後に来ているので84.50円を超えれば上昇再開に入る可能性が出てくるが、あくまでも11月4日午前高値を超えて戻り高値切り下がりパターンから抜け出せないと戻り一巡からもう一段安となって持ち合い下放れからの下げも三段下げ型に発展しかねないところと思われる。

短期テクニカル分析

豪ドル円の60分足チャートにおいては概ね3日から5日周期での騰落リズムがみられる。

豪ドル円は11月2日深夜安値84.499円と11月4日未明安値84.500円をダブル底としていったん買い戻されだが、11月4日夜にダブル底ラインを割り込んで一段安に入ったため、11月5日午前時点では11月4日午前高値を起点とした下落期入りとして安値形成期を5日夜から9日深夜にかけての間と想定した。

既に反騰注意期にあるものの83.50円を挟んでやや軟調な持ち合いにとどまっているので、84.50円を超えないうちは8日夜から9日にかけてもう一段安へ進む可能性があるとみるが、84.30円超えを強気転換注意とし、84.50円超えからはいったん上昇期に入るとみて9日午前から11日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落状態が続いているが、下落角度が鈍っているために遅行スパンは好転しやすい位置に来ている。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。強気転換は先行スパンを上抜くところからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先に切り替える。

60分足の相対力指数は4日夜の下落時に20ポイント台へ低下してからはジリ高の推移で、相場がジリ安で推移していることに対する強気逆行の気配となっている。しかし50ポイントに届かない程度にとどまっているので50ポイントを超えないかわずかに超えても40ポイントを割り込むところからは下げ再開とみる。強気転換には5ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持する上昇が必要と思われる。

11月8日の売買戦略

三角持ち合い型からの転落による下落基調にあるため、当面は戻り売り有利の情勢が続きやすいと考える。

84.30円から84.50円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。8日早朝安値83.739円割れからは83.50円、83.25円、83.00円を順次試す流れとみる。
ただし、84.50円を超えてその後も84.50円以上を維持し始める場合は11月1日深夜高値からの下落基調から抜け出しての反騰入りとして85円台前半を目指す流れへ進む可能性が出てくると考える。

11月8日の主な予定

  • 欧米中銀高官発言
  • 15:00 モンゴメリ・ボストン連銀暫定総裁、会合挨拶
  • 22:10 レーンECB理事、講演
  • 23:00 クラリダFRB副議長、講演
  • 24:30 パウエル米連銀議長、会議冒頭挨拶
  • 26:00 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
  • 27:00 財務省3年債入札
  • 27:50 エバンス・シカゴ連銀総裁、講演

今週の豪州関連主な予定

  • 11/9(火)
  • 09:30 10月 NAB企業景況感指数 (9月 5)
  • 11/10(水)
  • 08:30 (豪) 11月 ウエストパック消費者信頼感指数 (10月 104.6)
  • 11/11(木)
  • 休場、米国、カナダ
  • 中国、「独身の日」ネット通販バーゲンセール
  • 09:30 10月 豪新規雇用者数 (9月 -13.80万人、予想 5.00万人)
  • 09:30 10月 豪失業率 (9月 4.6%、予想 4.7%)
  • 11/12(金)
  • 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)閉幕
豪ドル見通し5年後 豪ドルの5年後見通しは?100円超えの可能性や相場分析から見る買い時とは【2022年最新】