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おはようございます。大塚亮です。
2021年12月1日の相場分析です。
目次
概況
ポンド円の11月30日終値は150.499円、前日比0.683円安と下落した。取引レンジは151.630円から149.730円。
11月30日午後からモデルナ社CEOによる従来ワクチンの有効性が低いとの発言が報じられたことからオミクロン・ショックによる下落が再燃してポンド円は150円割れまで安値を切り下げた。ドル円が深夜へ一段安したところから反騰したものの、深夜まで高値圏を維持していたポンドドルが急落するなど、ドル円とポンドドルの強弱が交錯したが、25時台の149.730円からは持ち直しの動きに入っている。
注目材料 マン英中銀政策委員はオミクロン感染拡大による景気回復鈍化を懸念
英中銀金融政策委員会のキャサリン・マン委員は11月30日に、「オミクロンが消費者信頼感の打撃となり、英経済の回復が弱まる可能性がある」との懸念を述べた。また「経済活動停滞による需給ギャップがインフレを押し上げる可能性もある」とも述べた。また英中銀による利上げに関しては「利上げ時期や利上げ幅を語るのは時期尚早」と述べた。
アジアでの感染拡大時に世界のサプライチェーンは大きく混乱停滞し、その間の欧米での景気回復による消費需要拡大と製造供給の需給ギャップが大きくなったことが今年に入ってからの世界規模のインフレを招いた。オミクロン株の感染力への懸念で世界各国が渡航制限や新たな規制強化の動きを見せているが、感染再拡大が深刻化するとサプライチェーンの正常化は遅れる。その一方で消費低迷や雇用悪化がみられる場合にはリセッション入りとなる可能性も出てくる。そうなると不況下でのインフレ進行というスタグフレーションに陥ることも考えられる。パニック度合いが大きくなれば昨年春のパンデミック初期のような大規模な金融市場の混乱が発生する可能性もある。
オミクロン株の発生前段階で欧州は感染再拡大期に入っていたが、英国でもオミクロン株の流入によりマスク着用等での行動規制が強まっているところだ。オミクロン株が弱毒性ならリセッション入りへの懸念が薄まりやや過剰な心配だったとして金融市場全般がリスクオンへと走る可能性もあるが、そこまで楽観するのは時期尚早なところであり、今のところは重症化レベルも不明なまま感染力がデルタ株よりも厳しいという不安を抱かせる状況だ。
注目情勢 米連銀はインフレ対策を優先 主要中銀で対応分かれるか
11月30日に米連銀のパウエル議長が上院銀行委員会で証言に立ったが、インフレは一時的なものとしてきた従来の見解を撤回し、インフレ抑制のためにテーパリングの終了時期を速めることを12月14-15日のFOMCで議論すると述べた。
11月30日深夜にドル円がいったん急伸したりポンドやユーロが一時急落したのは、この米連銀議長発言に驚いたからだった。オミクロン株発生で金融市場全般が先週末から動揺する中でより慎重な姿勢を見せるのではないかと市場は見ていたところでインフレ抑制を重視して引き締め姿勢への転換を一段と速める姿勢を示したことはサプライズだった。
11月10日夜にバイデン大統領がインフレ抑制を最優先課題とすると演説し、11月22日にパウエル米連銀議長の再任が決定した際にパウエル議長はインフレ対策を優先する姿勢を強調して大統領と歩調を合わせた。そのため11月22日は利上げ想定時期も早まるとしてドルは全面高となった経緯がある。
オミクロン株が深刻な感染拡大となってもインフレが進行すれば米連銀がインフレ抑制に主軸を置いて利上げ時期を前倒ししてゆく可能性も考えられるが、雇用の悪化がみられる場合は景気回復の腰折れも警戒されるために利上げも難しくなる可能性がある。主要国中銀としては金融政策のかじ取りも難しくなるところだが、市場としてはオミクロン株感染拡大情報と共に主要国中銀による感染状況への評価と金融政策スタンスを見定めてゆく難しい判断が日々続く可能性もあると思われる。
テクニカルポイント 150円割れからの反騰継続できるか
ポンド円は7月20日安値148.458円、8月20日安値149.182円、9月22日安値149.012円、10月1日安値149.233円と150円を割り込んだところを切り返してきた。今回も10月1日以来の150円割れを見たところから持ち直し気味の推移だが、これまでのように切り返しの起点となれるのかどうか試されるところだ。
10月1日安値から10月20日高値へと大上昇したような強気な展開へ進むにはオミクロン・ショックが解消されてリスクオン優勢の状況へと変化する必要があるが、情勢が一段と悪化しなければ7月20日安値から8月10日高値153.319円へ戻したように152円台、153円台を試す可能性も出てくるところと注目したい。逆にここで切り返しに失敗して早々に安値更新へ進む場合は150円割れを買い戻されてきた下値支持帯からの転落として下落の長期化が懸念される。
短期テクニカル
ポンド円の60分足レベルでは概ね3日から5日周期での底打ちと反落を繰り返すリズムがある。
11月27日未明に151円を割り込んだところから152円に迫るところまで戻したために11月29日午前時点では11月19日夜安値から5日目となる27日未明安値で目先の底を付けて反騰入りしたとしたが、底割れからは新たな下落期入りとした。
11月30日深夜に底割れしたため、現状は29日午前高値を起点とした新たな下落期に入った状況と思われるが、深夜安値からは1円以上の反発となっているためやや短めの底を付けて反騰期に入っている可能性もある。
151.50円を超えないうちは29日午前高値を起点とした下落期の継続とし、150.50円割れからは下げ再開とみて12月2日未明から6日朝にかけての間への下落を想定するが、151.50円超えからは反騰継続の可能性ありとみて29日ごzね高値試しへ向かう流れとみる。
60分足の一目均衡表では30日深夜からの反騰で遅行スパンが好転しやすい位置に来ている。先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところから下げ再開とするが、先行スパンを上抜くところからは上昇継続の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は27日未明安値から30日深夜安値への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられるので50ポイント以上での推移中は高値試し優先とするが、40ポイント割れからは下げ再開とみる。
12月1日の売買戦略
暴落一服で戻しているが、まだオミクロン・ショックは解消せずとみて戻り売り有利の情勢と考える。
151.00円から151.50円までのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。150.50円割れからは下げ再開を疑い、1日未明安値149.730円割れからは148円台後半へ向かう流れとみる。
12月1日の主な予定
- ユーロ圏
ー16:00 10月 ドイツ小売売上高 前月比 (9月 -2.5%、予想 1.0%)
ー16:00 10月 ドイツ小売売上高 前年同月比 (9月 -0.7%、予想 -1.7%)
ー17:55 11月 ドイツ製造業PMI・改定値 (速報 57.6)
ー18:00 11月 ユーロ圏製造業PMI・改定値 (速報 58.6) - 英国
ー18:30 11月 製造業PMI・改定値 (速報 58.2)
ー23:00 ベイリー英中銀総裁、講演 - 米国
ー22:15 11月 ADP非農業部門民間就業者 前月比 (10月 57.1万人、予想 52.5万人)
ー23:45 11月 製造業PMI・改定値 (速報 59.1)
ー24:00 11月 ISM製造業景況指数 (10月 60.8、予想 61.0)
ー24:00 10月 建設支出 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.4%)
ー24:00 パウエル米連銀議長とイエレン財務長官、下院金融委員会で証言
ー24:30 米エネルギー省週間石油在庫統計
ー28:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)