ユーロドルの今後の見通しは?値動きの要因や特徴を解説

ユーロドル

FXは世界中の通貨を組み合わせて取引を行うので、様々な通貨から好きなものを選んでトレードできますが、数ある通貨の中でも特に存在感が強いのが、アメリカの“ドル”、EUの“ユーロ”、日本の“円”の3つです。

BIS(国際決済銀行)が2019年に発表したデータによると、FX市場の通貨ごとのシェアは米ドルが約44%、ユーロが約16%、円が約8%と、3通貨ペアだけで全体の7割ほどを占めています。

そして、通貨ペアごとの取引量は、ユーロドルが約23%で世界第一位のシェアを誇っているんですね。ちなみに第二位はドル円で、そのシェアは約18%です。

今回の記事では、取引シェア世界ナンバー1のユーロドルについて詳しく解説していきます。

ユーロドルでトレードしようと思っている方や、通貨ペア選びで迷っている方にとっては、
間違いなく参考になるので、ぜひ最後までご覧くださいね。

ユーロドルとは

ユーロドル

それではまず、ユーロドルがどんな通貨ペアなのかを簡単に紹介していきます。

日本人からすると、ユーロドルは円が絡んでいない通貨ペアなので、クロス円に比べて若干計算などが面倒だというイメージがあるかもしれません。

実際、アメリカに関するニュースは日本でも頻繁に報道されていますが、その一方でヨーロッパのニュースは大きな出来事以外は、あまり取り扱われない傾向があります。

そのため、ヨーロッパ各国の政治や経済状況などが掴みにくく、トレード戦略がなかなかイメージできないという方も多いのではないでしょうか。

しかし、ユーロドルは取引量が非常に多いので流動性が高く、値動きも比較的穏やかという特性があるので、FX初心者でもトレードしやすい通貨ペアなんです。

ユーロドルには他にも様々な特性があるので、次で解説していきますね。

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ユーロドルの特性について

ユーロドル

ユーロドルの特性は非常に多いので、細かく分けて順番に説明していきます。

主に特性1~4は、ユーロドルのトレード方法に直結するもので、特性5以降はユーロドルの値動きにつながるような、ヨーロッパの様々な情報に関するものです。

また、先ほども少し触れましたが、日本にいるとヨーロッパの政治や経済状況が掴みにくいので、特性5以降はアメリカの情報よりもヨーロッパのことにフォーカスして解説します。

特性1:夕方から夜にかけて相場が動く

ユーロドルは取引量が世界一ですが、24時間活発に取引が行われているわけではありません。

日本時間の16時(冬時間適用中は17時)過ぎから始まる「ロンドンタイム」と、21時(冬時間適用中は22時)過ぎから始まる「ニューヨークタイム」で相場が活発に動きます。

一方で、日本の早朝にあたるオセアニアタイムや、その後の東京タイムでは値動きが鈍くなるので、利益が狙いにくくなります。

オセアニアタイムは、オーストラリアドルやニュージーランドドル、アメリカドル絡みの通貨ペアは値動きが活発になりますが、ユーロドルは落ち着いているんですね。

そして、東京タイムはドル円の取引は活発になりますが、ユーロドルを含めたその他のドル絡みの通貨ペアについては、取引量が少ないです。

つまり、ユーロドルでトレードするなら、夕方から深夜にかけて取引すると良いということです。

日本人からはドル円が人気ですが、ドル円相場が活発に動くのは日中の時間帯なので、サラリーマンや家事や育児で昼間は忙しい方には不向きです。

その一方で、ユーロドルは日中を忙しく過ごしている方にはピッタリだと言えます。

特性2:トレンドが分かりやすい

ユーロドルは比較的トレンドが分かりやすいので、FX初心者にオススメの通貨ペアです。

というのも、FX初心者が安定して利益を上げるには、トレンド分析を駆使して値動きを予想する必要がありますが、トレンドがころころ変わる通貨ペアは分析しにくいんですね。

その点ユーロドルは、トレンドが発生しやすい上に、一度トレンドが発生するとその後も継続しやすいので、トレンドフォローで利益を上げやすいという特徴があります。

チャートをパッと見て、上昇トレンドなのか下降トレンドなのかが判断しやすいので、FX初心者にもオススメの通貨ペアです。

ただし、注意点が一つあります。
それは、逆張りでエントリーしないようにするということ。

ユーロドルはトレンドが継続することが多いので、「そろそろトレンドが転換しそうだな」と思って逆張りでエントリーすると、そのままトレンドが継続して損失を出してしまう可能性が高いです。

トレードに慣れていて、ユーロドルのトレンド転換を見極めるのに自信があるなら良いのですが、FX初心者は順張りでエントリーするのが無難ですね。

「豪に入れば郷に従え」ではありませんが、少なくともユーロドルで利益を狙うなら、トレンドを素直に追従しましょう。

特性3:テクニカル分析が機能しやすい

ユーロドルはトレンドが出やすく、取引量が多いので、イレギュラーな動きをすることは比較的に少ないです。

なので、ファンダメンタルズ分析テクニカル分析では、後者のテクニカル分析が機能しやすい傾向があります。つまりオススメは、テクニカル分析を駆使してトレードすることです。

ただし、スイングなど長期でトレードする場合は、テクニカル分析に加えてファンダメンタルズ分析も取り入れましょう。

なぜなら、金融政策や経済政策などのファンダメンタルズ要因は、ユーロドルに限らず、長期にわたって相場へ影響を与えるからです。

長期トレードは、相場の大きな流れを読んで取引することが重要。そして、大きな流れの中で一時的に反対方向へ価格が動くこともあるので、これも覚えておいてください。

特性4:スワップポイントが高い

トレンドが発生しやすく、継続しやすいので、トレンドフォローで利益を狙うのもいいですが、ユーロドルはスワップポイント狙いのトレードもできます。

スワップポイントが高い通貨といえば、トルコリラメキシコペソ、南アフリカランド絡みの通貨ペアをイメージする方も多いと思いますが、実はユーロドルもスワップポイントが高いんですね。

ユーロドル相場を週足で確認すると上昇しているので、ユーロドルの取引でスワップポイントを狙えるのは、買いポジションです。

2020年までは長期的な下落トレンドでしたが、コロナが世界的に流行してから、相場の方向性が変わりました。

ただし、相場の世界に100%はないので、今後傾向が変わる可能性は十分にあります。注意してくださいね。

特性5:経常収支

まずはアメリカとEUの経常収支に関してですが、経常収支がどういう状況なのかはユーロドルの値動きにも関係します。

EU加盟国の中で経常収支が常に黒字なのはドイツとオランダだけです。その他のフランスやイタリア、スペインなどの国はおおむね赤字なんですね。

それでもEU全体では黒字なのですが、これはドイツが圧倒的な黒字を叩き出しているから。つまり、実質EUの経常収支はドイツで何とかなっているということですね。

アメリカは大規模な経常赤字なので、流れとしてはユーロ買い方向になります。

特性6:金融政策

金融政策とは、国の中央銀行が物価を安定させるために行う、通貨と金融の調節を行うことです。

物価の安定は経済成長や、雇用の安定にもつながる重要なものなので、国の中央銀行が取り仕切って行います。

EUには加盟国すべての金利を決定する欧州中央銀行(ECB)があり、ユーロ圏内の金融政策に関しては各国の中央銀行ではなく、ECBの政策理事会が決定します。

ECBの決定に従って、各国の中央銀行が具体的な金融調節を行うわけですね。

EUでは国が独自で金融政策を決めることはできませんが、ECBの目的はEU圏内物価を安定させることなので、そこは他の国の中央銀行と変わりません。

では実際のところ、ECBの金融政策は機能しているかというと、なかなかうまくいっていません。

というのも、EU圏内の国によってインフレ率や産業構造が違うので、一律で同じ金利を適用すると、必ずどこかの国で矛盾が発生することになります。

このあと解説しますが、財政政策はEUで統合していない中、ECBが金融政策だけで物価を安定させるのはかなり難しいです。

ECBはかつて、ユーロの実効レートが10%上昇、つまりユーロ高が進めば輸入物価が下がり、それに伴って消費者物価指数も押し下げられると予想していました。

しかし、現在は低インフレです。

低インフレの中だとECBはユーロ安を望むので、ユーロが買われすぎると、ECB内でユーロ高を懸念する声が出てきます。

特性7:財政政策

財政政策とは、政府が歳入や歳出を通じて、経済に影響を及ぼす政策のことです。

EUは通貨と政策金利は統合しましたが、財政は統合できていません。そのため、基本的には一定の制限の中で、加盟国がそれぞれ責任を担って財政政策を行っていきます。

「短期金利」は加盟国全体で同じですが、「長期金利」は国ごとにばらつきがあり、財政が健全なドイツに比べてイタリアやスペインなどの国債利回りは、慢性的に高いです。

財政政策は別で長期金利が異なると、当然ですが本質的に矛盾しているので、どこかのタイミングで問題が表面化する可能性が高いんですね。

仮に財政を統合すれば、EU全体で財政調整ができるようになるので、加盟国ごとに見られる経済力のばらつき改善へと進むはずです。

2020年には、コロナへの対応策として欧州共同債が決まりましたが、これはEUにとって大きな一歩と言えます。

実際、欧州共同債決定後は、ユーロが大きく買われました。

特性8:政治問題

ユーロの取引が始まったのは2002年なので、世界的に見ても新しい通貨ですが、現在はEUに加盟している27カ国のうち19カ国で使われています。

特性1でも解説しましたが、EUには経常収支が赤字の国と黒字の国が混在していたり、北欧と南欧で財務状況が全然違ったりするので、政治問題もとにかく頻繁に起こります。

EUの大きな政治問題をピックアップしてみると、

  • 2010年の欧州ソブリン危機
  • 2014年のギリシャ危機
  • 2016年に報じられたイギリスのEU離脱
  • 2017年のフランス大統領選
  • 2018年と2021年のイタリア政治問題

などなど、頻繁に政治問題が発生していることが分かります。

ちなみに上記以外にも、スペインのカタルーニャ独立問題も日本では大々的に報じられていましたし、とにかく細かいものも含めたらキリがありません。

また、EU加盟国の代表が集まって議論して決定したことは、それぞれの国が自国に持ち帰って採決するフローになっています。

この流れができあがっているため、安易に妥協した案を持ち帰ると、国内世論から反発を受けるんですね。

そのため、EU全体で何かを決定させるまでに、かなり時間がかかることが多いです。

とはいえ、最終的に決定した議案にはEU加盟国として同意せざるを得ないので、政治問題で売られたら、そこは買い場とも言えます。

ちなみに最近では、極右と言われるユーロ離脱も辞さない方針の政党が、ドイツやフランス、イタリアなどで台頭しているため、選挙のたびに不安要素が表面化します。

特性9:外貨準備

先ほどもお伝えしましたが、アメリカドルはFX市場の約4割のシェアを誇り、それに次ぐ取引量なのがユーロです。

ユーロは第2の基軸通貨になりうるポテンシャルがあり、EUとしてもユーロの国際的地位向上を狙っています。

日本も含めた世界各国の中央銀行が、外貨準備量を調整する際には、ドルとユーロを調整する量が最も多くなるのです。直近では、大統領選などもあり、政治的にやや不安定だったアメリカのドルを避け、ユーロの割合が増える傾向があります。

そのため、ユーロ買いの流れが強まっているんですね。

特性10:金利差

ユーロのほうがドルよりも金利が低く、ユーロドルでトレードしてスワップポイントを得るには売りポジションを持つことになります。

そうなると、長期投資を行う人にとっては、ユーロで買いにくくなってしまいます。ただ、ユーロ高が進めば、長期投資を行う人たちのユーロ売りが出てくる傾向があるんです。

これは、円高になると日本人が、クロス円の買いポジションを持つという行動に似ていますね。

特性11:地政学的リスク

EUはロシアやアラブ諸国と、地理的にも経済的にも深く結びついています。

そのため、ロシアやアラブ諸国で紛争やテロが起きたり、経済危機が発生すると、ユーロも巻き添えを食らって、リスク回避のために売られやすくなるんです。

この真逆の動きを見せるのが、アメリカのドル。

「有事のドル買い」と言われるように、地政学的リスクが顕在化すると、ドルが買われる傾向があります。

つまり、EUが関係している地政学的リスクが高まると、ユーロドルは売られやすくなるんですね。

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近年のユーロドルの相場

ユーロドル

それでは次に、近年のユーロドル相場の様子を解説していきます。

2018年1月から、2020年の5月頃までは価格が右肩下がりに下降していましたが、それ以降は上昇へと転じています。

2020年と言えば、コロナが世界中に蔓延した年です。

つまり、先行き不透明な社会情勢でもユーロドルは買われ続けたということ。取引量世界ナンバー1の通貨ペアとしての信頼が、証明された出来事だと言えるかもしれませんね。

ユーロドルの今後の予想

ユーロドル

相場を見る限り、高値と安値がしっかりと切り上がっているので、しばらくは上昇トレンドが継続しそうです。

また、ユーロドルの特性を考慮すると、この先もしばらく変わらない材料としては、経常黒字によるユーロ買いと金利差によるユーロ売りがあります。

ただし、これらは買いと売りなので、結局は相殺されます。

では何に注目すればいいのかと言うと、突発的に発生する政治的リスクや地政学的リスクです。ユーロドルの相場が、これらの影響を受けるのは間違いありません。

それでは最後に、ユーロドルの上昇要因と下降要因を解説していきますね。

上昇要因

ユーロドルの上昇要因としては、アメリカ雇用統計、ECB政策金利発表などの経済指標が、事前の予想を上回る良い数値を出した場合ですね。

アメリカとEUには、FX界でも特に有名で重要な経済指標が集中しているので、トレードする前に経済指標がいつ発表されるのかを必ずチェックしましょう。

下降要因

ユーロドルの下降要因としては、アメリカ雇用統計、ECB政策金利発表などの経済指標が、事前の予想を下回る悪い数値を出した場合です。

こちらも同様に、トレードする際は経済指標が発表されるタイミングを考慮しないといけません。

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出典:アイネット証券|【2021年】ユーロドルの今年の流れと今後の展開