豪ドル円見通し オミクロン・ショック一服での下げ渋り続く

豪ドル円見通し オミクロン・ショック一服での下げ渋り続く

おはようございます。大塚亮です。

2021年11月30日の相場分析です。

概況

豪ドルの11月29日終値は81.094円、前日比0.352円高と反発した。取引レンジは81.404円から80.628円。

11月26日早朝から感染力がデルタ株より強い新種の変異株が発生したとして金融市場全般が動揺、リスク回避に走って豪ドル米ドルが急落、ドル円も大幅下落となったために豪ドル円は豪ドル安と円高の両面から圧されて26日を前日比2.152円安の暴落的な下げとなり、27日早朝に80.472円まで安値を切り下げた。

週をまたいで週明けは市場もやや落ち着きを取り戻して週末に大幅下落した諸市場が買い戻しに入り、豪ドル円も豪ドル米ドルとドル円がともに下げ渋りからやや持ち直したことで戻り高値を試す動きとなった。29日午前に81.347円へ上昇後に81円を割り込んだところも買い戻されて深夜には81.404円まで高値を切り上げた。30日午前序盤も81円を割り込んだところは買われており、81円を挟んで揉み合いながらやや高値を切り上げる展開となっている。

注目情勢 オミクロン・ショック、最悪と最善のシナリオの間で揺れる

WHOは11月26日に新変異株を「オミクロン株」と命名し、最高の警戒レベルであるVOC(懸念される変異種)に指定した。11月11日にボツワナで発生したとされ、25日には南アで急拡大したが、26日に香港やオーストリア、イスラエルへ波及したこともあり発生確認直後から感染力の高さを不安視して金融市場全般が動揺した。

11月30日朝時点で、世界16か国地域でオミクロンの感染が確認されている。

オーストラリアでもオミクロン株の感染者が確認されているが、長期に渡ったロックダウンを解除してウィズ・コロナ政策をとり始めた矢先の新種襲来であり、ウィズ・コロナ政策を維持できるのか、再びロックダウンを余儀なくされるのか市場も不安を解消できずにいる。

最悪のシナリオはオミクロン株がデルタ株と同様の強毒性をもってデルタ株以上の感染力により昨年のパンデミック初期のような混乱が発生して世界経済が再び停滞に陥ることであり、その際は資源輸出通貨の豪ドルへの売り圧力も厳しくなる可能性がある。逆に最も楽観的なシナリオではデルタ株よりも弱毒性のオミクロンがデルタ株にとってかわりパンデミックも終息へ向かって景気回復が一挙に進むというもので、その際は豪ドルもリスク選好で大上昇へ進む可能性も出てくる。まだ情報が錯綜しているところであり、先週末の暴落については一服感があるものの戻しきれずにいるところを見ると市場は不安心理に圧迫されている状況にとどまっているということではなかろうか。

注目材料 7-9月期の豪経常収支は過去最大

11月30日午前に発表された7-9月期の豪経常収支は238億8600万豪ドルの黒字となり、黒字としては過去最大となった。経常収支の黒字は10四半期連続となった。市場予想の293億豪ドルの黒字には届かなかったものの前期の228億7000万豪ドルを上回った。

貿易・サービス収支では389億1100万豪ドルの黒字で前期の308億1000万豪ドルの黒字から拡大した。豪統計局は「石炭と他の鉱物燃料で輸出額が増加、農業輸出も数量が増加した」とした。7-9月期は良好だったわけだが、10-12月期及び1-3月期については新変異種のオミクロン株による世界経済全般への影響が出る可能性もあると思われる。

11月30日午前に発表された10月の住宅建設許可件数は前月比で12.9%減となり9月の4.3%減からさらに悪化して市場予想の2.0%減を大幅に下回った。
これら発表に対する市場の反応は限定的で、オミクロン・ショックに対する市場全般の動向を見定めたいという動きとなっている。

短期テクニカル分析

豪ドル円の60分足チャートにおいては概ね3日から5日周期での騰落リズムがみられる。

11月19日夜へ一段安したところからの持ち直して83円を挟んだ揉み合いとなっていたが、11月26日午前時点では24日午後安値を割り込む場合は24日朝高値を起点とした下落期とみて25日夜から26日夜にかけての間への下落を想定するとしていた。11月27日早朝へ続落したところから週明けの29日は81円台序盤まで戻していたため、29日午前時点では11月19日夜安値から5日目となる27日早朝安値を目先の底として戻りを試しに入った状況とし、底割れ回避のうちは29日の日中から12月1日午前にかけての間への上昇余地ありとした。

11月30日午前時点もややジリ高での推移が続いているのでまだ戻りを試しているところとみるが、80.80円割れからは下げ再開注意とし、27日早朝安値割れからは新たな下落期入りとして12月2日未明から4日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では27日早朝安値からのジリ高がつづいて遅行スパンが好転、先行スパンへ潜り込みつつある。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン上限前後では売られやすいと注意し、80.80円割れを伴う遅行スパンの悪化からは下げ再開を疑う。

60分足の相対力指数は26日夕刻への急落時に10ポイント割れまで下げた後は相場の安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて戻している。30日午前時点では50ポイントを超えてきているので40ポイント以上での推移中は50ポイント台後半から60ポイント台を目指す可能性があるとみるが、40ポイント台を維持できずに失速する場合は20ポイント前後への低下を伴う一段安を想定する。

11月30日の売買戦略

週末の暴落一服ではあるが、情勢が一変して急騰情勢へと転じてはいないため、まだ市場の疑心暗鬼が続くとみて豪ドル円も当面は戻り売り有利の情勢が続きやすいとみる。

81.50円から81.85円ににかけてのゾーンは戻り売りされやすいところとみる。80.80円割れからは下げ再開注意として27日早朝安値80.472円試しとし、底割れからは80円、79.70円、79.50円等を順次試す流れとみる。

11月30日の主な予定

  • ユーロ圏
  • 17:55 11月 ドイツ失業者数 前月比 (10月 -3.90万人、予想 -2.50万人)
  • 17:55 11月 ドイツ失業率 (10月 5.4%、予想 5.3%)
  • 19:00 11月 ユーロ圏消費者物価指数・速報値 (10月 4.1%、予想 4.4%)
  • 19:00 11月 ユーロ圏消費者物価コア指数・速報値 (10月 2.0%、予想 2.3%)
  • 米国
  • 23:00 9月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (8月 1.0%、予想 1.2%)
  • 23:00 9月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (8月 19.7%、予想 19.3%)
  • 23:45 11月 シカゴ購買部協会景景況指数 (10月 68.4、予想 67.0)
  • 24:00 11月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (10月 113.8、予想 110.9)
  • 24:00 パウエル米連銀議長とイエレン財務長官、上院銀行委員会で証言
豪ドル見通し5年後 豪ドルの5年後見通しは?100円超えの可能性や相場分析から見る買い時とは【2022年最新】